<菅付雅信:新連載「ライフスタイル・フォー・セール」>第八回:湘南が示す次なるコミュニティ・ビジネス
このニュースをシェア
■ライフスタイルは切り売りするものではない
逗子に暮らして25年目になるという高須勇人さんは、湘南コンフォートライフを代表する葉山のお店「SUNSHINE+CLOUD」のオーナーだ。2013年4月に移転し、元々保養所として使われていた建物を改装して作られたという広々としたリノベ空間の中には、オリジナルラインの洋服はもちろんのこと、生活雑貨、生花、本などが並び、料理家の長尾智子さん監修の地元野菜を中心としたカフェ「Over Easy」が併設している。東京の坪効率重視の商業空間ではありえない空間の贅沢さ。広い中庭もあり、ここだけ東京とはまったく違う時間が流れている。
「生まれは東京なんです。でも僕にとって東京は住みづらかったので、海の近くに住みたいと思い、湘南エリアで住む場所を探していたんです。逗子は海も近いのですが意外と普通の街らしいところが気に入りました。駅前を降りると魚屋さんや八百屋さんがあって、住んでいる方も気負いなく海辺の生活を楽しんでいる方が多いんです。もちろんサーフィンをしている人も多いですが、波があれば海に入るぐらいの気持ちで、自転車に乗るのと同じ感覚ですね」
「洋服のラインナップは基本的に自分が着たいと思うものを揃えています。定番のものが6、7割を占めますね。お店は最初から複合形態にしようと思ったわけではなく、こういうのがあったら良いなというところからすべて広がってき、結果的に今の形態になっているという自然発生的な流れです。生花もやりたいとずっと思っていたら、うちのスタッフの奥さんが花屋さんをやっていたんでやろうということになった。Over Easyを長尾さんに監修していただいたのも、うちがやっている代官山のお店G.O.D.に以前からいらしていたことがきっかけです。すべて始めから意図的に組み込むわけではなくて、流れの中でこんな風になったらいいなと思っていたら、後付けで出来てきました。ライフスタイルショップだからこれとこれをやろうという風に揃えているつもりはないんです。ライフスタイルって切り売りするものではなく、自分たちで学ばなきゃいけないものであって、これとこれを揃えればライフスタイルが完成するというものでも無いんですよね。」
高須さん自身が湘南の生活と向き合う中で自然と出来たのが今のSUNSHINE+COULD。流行を追いかけることとは対極にある店のあり方は、これからの消費行動がコミュニティ・ビジネス化していくことを示している。
「生活の場として、仕事の場としても、自分のスタンスを保つためには、好きなところにいなきゃいけないと思います。アメリカのライフスタイルに憧れるのはわかりますけど、本来ならもう少し咀嚼して、自分たちでスタイルを作って行かなきゃならない。時間が経って初めてスタイルになってくるわけだから、時間軸が必要じゃないですか。確かにビジネス的にはそんな時間軸はいらないかもしれませんが、それで2、3年経つと閉店してしまう店が多い。それでは店は成熟していかないのかなとは思います。自分たちのものにして咀嚼して提案したら、ひとつのスタイルになっていく。うちに来てくださるお客さんは、都会から来る方と地元の方と半々です。毎週土日に来て、何かしら買って帰ったり、食べに来たりしてくださる。そういう方たちはうちの店が好きで来ていただいていて、そして私たちを応援してくださっていると感じます。都会からわざわざ来て下さる方は、ここに来て買い物をし、天気が良ければ海によって帰る。そんな道のりが価値だと思ってくださっている方が多いと思います。そんな方々に応援していただいているので、僕らはより良いものを作っていかなければならないなという責任は感じます」
「S+Cの客は、“消費は投票である”という言葉を思わせますね」との僕の言葉に高須氏は「ほんとうにそれを感じます。うちのお客さんはここでたくさん買い物したいお客さんというよりも、“この店がなくなると困る、だから自分たちが頻繁に通わないと潰れるのではないか”と思ってくれているお客さんなのかも」と笑いながら答えた。
ニュース提供社について