■将来的には完全ワイヤレスに

 だが今回、研究チームはナノテクノロジーにその解決法を見出し、厚さ約1ミリのばんそうこうに似たしなやかで伸縮自在な機器を開発した。論文によると、まだ試作品の段階だが、この機器は多層の極薄ナノ薄膜とナノ粒子で構成されているという。

 研究チームは、論文の要約の中で「チームは、運動センサーにシリコンのナノ薄膜を、不揮発性メモリーに金のナノ粒子を、熱アクチュエーターに薬剤入りのシリカナノ粒子をそれぞれ使用している」と記している。

 論文によると、患者の手首にこの機器を装着して筋活動を測定・記録し、そしてそのデータに応じて、内部の極薄ヒーターで熱を発生させ、ナノ粒子内に格納された薬剤の放出が誘発されるという。シリコンナノ薄膜でできている温度センサーは、投薬中にやけどをしないように皮膚温度を監視する。

「このプラットフォームには、従来型ウェアラブル機器の限界を克服して、コンプライアンス、データ品質、現在の臨床診断法の有効性などを向上させる可能性がある」と論文の執筆者らは説明する。

 韓国・ナノ粒子研究センター(Center for Nanoparticle Research)のキム・デヒョン(Dae-Hyeong Kim)氏によると、この機器は現在のところ、外部コンピューターのマイクロプロセッサーが必要だという。これは腕時計の中に搭載でき、細いケーブルで機器に接続される。

 同氏はAFPの取材に、機器を独立させて完全に可動式にすることを視野に「将来的にはワイヤレス部品が組み込まれる予定」と述べた。(c)AFP