■大躍進「チョバーニ」と老舗「ファゲ」の攻防

 これを商機に結びつけたのがトルコの起業家、ハムディ・ウルカヤ(Hamdi Ulukaya)氏だ。同氏はトルコ語で羊飼いを意味する「チョバーニ(Chobani)」という名のヨーグルト会社を設立。「ギリシャヨーグルト」の名で米国で販売したところ爆発的に売れ、チョバーニは、わずか7年で米国で最も売れているヨーグルトブランドとなった。ちなみに、ギリシャ語の羊飼いという単語も、チョバーニと似た言葉だ。

 米国のヨーグルト市場でギリシャの製法によるヨーグルトが占める割合は、2008年には4%にすぎなかったが、今では市場全体の35%を占めるまでになっている。

 ウルカヤ氏は2011年、米経済誌フォーチュン(Fortune)にこう語っている。「米国に(ギリシャ製法のヨーグルトを)紹介したのがギリシャの会社だったから『ギリシャヨーグルト』と呼ばれている。それがギリシャのヨーグルトであろうとトルコのであろうと、良いヨーグルトでさえあれば関係ない」

 実は数十年前に欧米市場に初めてギリシャヨーグルトを紹介したのは、ギリシャの乳製品製造販売大手「ファゲ(Fage)」だった。そのファゲも米国で「ギリシャの水切り製法ヨーグルト」を販売しているが、市場シェアをチョバーニから奪回できていない。

 だが、ファゲも英国では95%のシェアを守っている。今年1月には、ファゲのヨーグルトはチョバーニと異なり、実際にギリシャで製造されたものだとのファゲ側の主張を英国の裁判所が認めている。

 現在、チョバーニは同じ商品を英国では「水切り製法ヨーグルト」、米国では「ギリシャヨーグルト」との名称で販売している。これに対しファゲは自社ヨーグルトを、「本物のギリシャヨーグルト」と銘打って英国で販売している。(c)AFP/Sophie MAKRIS