地球工学の温暖化対策で「事態悪化も」 研究
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■気候変動に匹敵する悪影響も
こうした地球工学は、「それ自体が防ごうとしている気候変動と同程度の悪影響をもたらす恐れがある」とケラー氏は警告する。
研究によると、SRMは温暖化を速やかに軽減する可能性のある唯一の方策であることが判明したが、降雨傾向の変化といった最悪の類いの副作用を伴う恐れがある上に、SRMを停止すれば地球温暖化がすぐに再開することになるという。
さらに地球工学には、海面を上昇させる、世界の一部の地域で地表面反射率(アルベド)を低下させて局所的な気温の上昇を引き起こす、海から酸素を奪う、オゾン層を枯渇させるなどの恐れがある。
「シミュレーション結果は、この種の気候工学が温暖化緩和の不足分を補う可能性は非常に限られているかもしれないことを示している」と論文は述べている。
SRMについて、国連の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)は昨年、「実現可能だとすれば」地球温暖化を相殺する可能性があるが、一方で地球規模の水循環(全球水循環)を変化させ、海洋酸性化の軽減にはつながらないだろうと報告した。
地球工学プロジェクトは、こうした環境的リスクだけでなく、未知の経済的コストを抱えていたり、法的・政治的な障害に直面したりすることが、これまでの研究で明らかになっている。今回の論文の執筆者らは、地球工学は温暖化緩和への取り組みを「補う」かもしれないが、排出量抑制に焦点を絞る方が得策だろう、と結論付けている。