<菅付雅信:新連載「ライフスタイル・フォー・セール」>第七回:ビームス設楽代表が語る、物欲なき時代のライフスタイル・ビジネス
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■商品ではなくコミュニティを売る
そんな十貨店方針のビームスは、特にこの1、2年でライフスタイルを軸に置いた、様々な新業態を打ち出している。ファッションからライフスタイルへという変化を、設楽社長は次のように語る。
「モノが溢れる時代に考えなくてはならないことのひとつに、どうやって他と差別化された価値を付けるかという問題があります。例えば市場の中で、エルメスあるいはユニクロは確実に差別化されていますね。エルメスは質も価格も最高級のものを、ユニクロは自社の技術を低価格で提供します。しかし我々も含め、ほとんどのブランドやお店は、その中間に位置しています。そのひしめき合った中間層の中で、他との差別化を図ろうとする場合、それをモノに頼ることはもうできないと思ったのです。我々の世代は、ものすごくモノと情報に飢えていたから、欲しいモノを見つけて手にした時には、インコンビニエントであるがゆえの、ものすごい感動と喜びがありました。ところが、今はキーボードを叩けばどこに何があるかがわかるようになっています。コンビニエントな時代には、ひとつのモノを所有することでの喜びが薄くなって、感動が違うものになってきたんです。だから、そのモノを買って手にすると、その先にどんなハッピーが生活の中にあるかというところまで提案しなければいけない。かつて、車やカメラのカタログも、デザインやスペック、スピードがどれだけ出るか、エンジンはどうか……ということで宣伝していたけれど、おそらく今後はそれを使った生活がどういうものであるかというカタログが必要になってくるでしょう。そうであれば、モノを使った生活を提案する集団、つまりコミュニティ・ブランドになるべきではないかと思うのです。モノそのものへの渇望ではなく、そのモノを使って誰かとアウトドアを楽しんだり、誰かとプレゼントを送り合う喜びを感じたり……。洋服や物だけで売るのではなくて、それを通した生活やハッピーを売るとすると、最終的にやるべきことはコミュニティを作ることではないかというところにたどり着きました」
「例えば、コム デ ギャルソン風、アルマーニ風、ブルックス・ブラザーズ風……と言った時に、大体こんな格好をしている人だろうなと思い浮かぶと思います。ところが、ビームス風と言ったときには、それぞれの人が思い浮かべる姿が違うはずです。ある人はモード系、ある人はストリート系、カジュアル系あるいは、トラディショナルな格好を思い浮かべます。100人いれば100のビームスがあって、それがビームスの特徴だと思っています。実際、うちのスタッフには、アウトドア好き、アロマ好き、ゲーム好き……色んな一芸を極めた人間が集まっています。今後のファッションが、ファッション・フェチの人たちだけのものになってしまわないためには、ある種のそうしたコミュニティ化が重要になると思っていて、同好の士や、同じ趣味を持った仲間たちを入り口にしていくことを考えています。昨年、楽天さんとコラボした企画『BEAMSハッピー隊』もそのひとつです。1億3千万点ある楽天の商品の中から、ビームスがセレクトをしたものを売ろうと。先ほど挙げたような、多様な趣味を持ったスタッフが推薦することで、その趣味のコミュニティを通じて売っていくことが、次のビジネスではないかと思います」
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