【2月23日 AFP】広大な敷地に大理石を敷き詰めて建てられた豪邸、プライベートのゴルフコースや動物飼育施設──ウクライナの首都キエフ(Kiev)から約15キロ離れたビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)同国大統領の私邸が22日、大統領が支持基盤のある東部に脱出した後に反政権勢力に掌握され、公開された。何千人もの見学者らは想像を超えた大統領のぜいたくな暮らしぶりを目の当たりにして、畏敬の念さえおぼえたように歩き回った。

 ヤヌコビッチ大統領をめぐってはこの日、最高会議(国会)が解任を決議している。退役軍人のナタリア・ルデンコ(Natalia Rudenko)さんは、ウサギやシカの像が点在する芝生に目をやりながら「ショックを受けている。貧困がまん延している国で、1人がなぜこれほど豊かになれるのか。どうかしているに違いない」と語った。「世界はこれを直視し、彼(大統領)を法の裁きにゆだねるべきだ」

 派手好きなロシアの新興財閥の実業家にも匹敵する大統領の豪華なライフスタイルを一目見ようと、鍛鉄の正門前では車が渋滞し、大勢の人々が辛坊強く行列を作った。野党勢力の活動家は門柱の上からメガホンで群衆に対し、地雷が仕掛けられている場合に備えて芝生に立ち入らないよう警告するとともに、私邸の損壊を図る工作員への用心を促した。

 私邸はこのわずか数時間前まで精鋭治安部隊に警備されていたものの、現在は反政権勢力が管理下に置き、略奪行為を防ぐためパトロールを行い、建物への立ち入りを制限している。私邸の規模は機密として厳重に守られていたが、大規模な汚職があったことの裏付けになりそうだ。ヤヌコビッチ大統領の年俸は10万ドル(約1025万円)前後で、私邸の豪華さから判断して年俸を上回る富を得ていたことは明らかだ。

 夫婦で見学に来ていた整備士のビクトル・コバルチュク(Viktor Kovalchuk)さん(59)は、妻があっけに取られて首を振る中、この豪華な私邸を「病院や孤児院など、抗議活動で死傷した人々のための施設に転用するべきだ」と語った。「何があっても(私邸は)国民に引き渡されるべきだ。結局われわれの金で建てられたのだから、最終的にわれわれのために使われてしかるべきだ」(c)AFP/Max DELANY