【2月22日 AFP】反政権デモと警官隊の衝突で3日間におよそ100人の死者が出たウクライナで21日、ビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)大統領と反政権派が、旧ソ連からの独立以降、最悪の危機の収束に向けて合意文書に署名した。

 首都キエフ(Kiev)にある大統領府のブルーホール(Blue Hall)に集まったボクシングの元世界チャンピオンでもある野党ウダル(UDAR)のビタリ・クリチコ(Vitali Klitschko)党首らが、大統領と共に署名に臨んだ。

 合意文書は欧州連合(EU)の大国である独仏と、文化的にウクライナと関係が深いポーランドの3外相がEUを代表して2日間にわたって行った仲介でまとめられたもの。EUはウクライナ政府幹部らに対し、暴力行為に関わった責任があるとして、域内への渡航を禁止する制裁措置を発動している。

 ヤヌコビッチ大統領は大統領選の前倒しと挙国一致内閣の樹立、暴力行為に関与した者への恩赦の実施を表明したが、キエフ中心部の広場に集まった4万人近いデモ参加者の間では、政権に対する敵意や疑念は払拭(ふっしょく)されていない。市民の多くは、大統領が辞任しないことにいら立ちを募らせている。

 署名を受け、ウクライナ最高会議(国会)は反政権派が求めていたいくつかの法案を可決した。これにより、2010年の現政権発足後に職権乱用罪で禁錮7年の判決を受け現在服役しているユリヤ・ティモシェンコ(Yulia Tymoshenko)前首相が釈放される可能性も出てきた。だが、 法律の発効には大統領の承認が必要となる。

 新たに発足する挙国一致政府には、昨年11月にヤヌコビッチ大統領が決定したEU加盟の前提となる連合協定の締結見送りを撤回する権限が付与される見通しだ。

 なお、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領の特使、ウラジーミル・ルキン(Vladimir Lukin)氏は合意文書の署名の場に現れずに帰国の途に就いた。ルキン氏はモスクワ(Moscow)に帰る途上「(合意には)幾つかの問題が残っている」と述べるとともに、「協議は続くだろう」として何らかの形での合意修正に望みを捨てていない姿勢を示した。ロシア外務省は、ルキン氏は署名こそしなかったものの、ロシアは妥協を拒否するつもりはないと発表した。(c)AFP/Dmitry ZAKS