【2月7日 AFP】2012年に連れ合いに先立たれて以降、アルトゥーロ(Arturo)は悲しみの中にいる。それにアルゼンチンは今は夏真っ盛り。アルトゥーロは暑さに疲弊している。涼しいカナダへの旅で、もしかしたらアルトゥーロの気分も晴れるかもしれない。

 アルトゥーロは、アルゼンチン西部アンデス(Andes)山脈のふもと、メンドサ(Mendoza)の動物園で飼育されている高齢のホッキョクグマだ。

 7日、カナダとチリ、アルゼンチンの獣医師団が、29歳になるアルトゥーロにカナダへの長旅が耐えられるかどうかを判断する。カナダのウィニペグ(Winnipeg)の動物園が、アルトゥーロの引き取りを申し出たのだ。

■カナダ移住に周囲は期待

 体重400キロのこのホッキョクグマの運命について、アルゼンチンに無関心な人はいない。

 1993年にメンドサに来たアルトゥーロは、20年の年月を重ねて、メンドサの暑い夏と温暖な冬に慣れている。そのアルトゥーロが、カナダの凍えるような冬に耐えられるのかどうかに疑問の声もある。

 アルトゥーロを速やかにカナダに移送することを求める16万人の署名を集めたのは、国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)。グリーンピースは、カナダの方がホッキョクグマの自然の生息域により近い天候だと述べている。

 またアルゼンチンの人々も、動物園が十分な注意を払っていないとして、カナダ移住の許可を呼び掛けてきた。

■食事や施設は充実、悲しみが影落とす日々

 メンドサの動物園で、アルトゥーロは毎日15キロの肉と、食べ放題のフルーツと野菜を与えられている。アルトゥーロはハチミツ好き。飼育員が遅刻すると、アルトゥーロはうなり声を上げて催促する。

 動物園のマスコット的な存在として、アルトゥーロは35平方メートルのエアコン付きの施設と、500平方メートルの砂浜とプールを与えられ、飼育員から氷の塊をもらい涼をとっている。

 専門家らは、20年間の連れ合いだったペルサ(Pelusa)が2012年5月に30歳で死んだことに、アルトゥーロは深く悲しんでいると述べる。ペルサは数頭の子どもを産んだが、生き残った子どもはいない。

 ペルサの死後、「ふさぎ込んだアルトゥーロが立ち直ったことは一度もなかった」と、動物園のディレクターは語った。(c)AFP/Josefa SUAREZ