■消費者の多くが信じる「ナチュラル」

 クラフト側にメール取材を申し入れたところ、同社の広報担当者キャロライン・クラジュスキ(Caroline Krajewski)氏は、カリフォルニア(California)州の米連邦裁判所が最近、クリスタルライトに対する同様の訴訟を却下したばかりだと述べ「わが社の製品は、消費者に役立つ真実の情報を、明確にそして正確にラベル表示している」と回答した。

 食品が実際には明らかに「ナチュラル」でなくても、そうした表示が可能なのは、米国の規制当局である米食品医薬品局(Food and Drug AdministrationFDA)が「ナチュラル」という言葉を公式に定義していないからだ。

 しかし、FDAの広報を担当するテレサ・アイゼンマン(Theresa Eisenman)氏はメール取材に対し、FDAが企業に警告書を送ったことは過去に何件かあると答えた。「FDAは『ナチュラル』という言葉に対する正式な定義は定めていないが、食品表示における『ナチュラル』という語の使用については長年の方針を持っている。FDAでは『ナチュラル』という単語について、食品に本来は含まれていない人工・合成添加物(あらゆる着色添加物を含む)が追加されたり含まれたりしていないことを意味すると考えている」

 だがFDAはこれまでクリスタルライトを放置しており、消費者団体は、規制が十分でないために、パッケージ表示を信じやすい善意の消費者を企業が搾取する機会が増していると批判している。

 米調査会社ニールセン(Nielsen)によると、米市場で「ナチュラル」をうたう製品の売上高は年間220億ドル(2兆2000億円)に上る。また米消費者の77%は「ナチュラル」という表示を「ときどき信じる」と回答し、9%は「いつも信じる」と回答した。

■規制か訴訟か、企業を「誠実」にさせる方策

「ナチュラル」という表現を使った食品表示問題をめぐる訴訟の件数は多いものの、たいていの場合は当事者間の和解で終わり、企業は多額の賠償金の支払いを回避していると、ガートナー氏は述べる。「われわれが企業に止めさせている。だが企業は、不正に消費者から盗んだ金を返さないでいる」。FDAが「ナチュラル」の定義を確定させれば、多数の訴訟は起きなくなるとガードナー氏はみている。

 だが、食品に関する規制緩和や自由化を掲げるNPO「キープ・フード・リーガル(Keep Food Legal)」のベイレン・リネキン(Baylen Linnekin)事務局長は、規制強化が答えではないと語る。「食品に言及するために使用されてきたありとあらゆる単語を、FDAが定義しなければならないという考えは滑稽だ。これまでも常にそうであったように、時々起こされる訴訟が企業の誠実さを維持するのに役立つだろう」(c)AFP/Kerry SHERIDAN