しかし、プルシェンコにとって、ソチ(Sochi)行きはいばらの道だった。2013年夏、長年悩まされた腰痛を克服するため、背中の大がかりな手術を受けた。持病の影響で、近年は自身の最高のスケートを見せられなくなっていたことが理由だった。

 迎えた同年12月、10度優勝しているロシア選手権に臨んだプルシェンコは、五輪の選考会も兼ねていたこの大会で、18歳の新星マキシム・コフトゥン(Maxim Kovtun)にまさかの敗戦を喫した。

 ソチ五輪のフィギュアスケート・男子シングルで、ロシアに与えられる出場枠は1つ。そのためプルシェンコは2位に終わった大会直後、シングルでの役割は若い選手に任せ、自身の参戦は、今回が初開催となる団体戦に絞ると発言していた。

 しかし、世界選手権で3度、欧州選手権で7度王座に輝いているプルシェンコは、その後に考えを変え、ロシアのたった1枠の選手に指名されるあらゆる権利が自身にはあるとコメントし、シングルで五輪出場を目指す意向を示した。

「ソチで戦う権利が僕にあるのかと疑問を呈する人たちには、まず思い出してほしい。コフトゥンは前の年のロシア選手権で5位だったにもかかわらず、欧州選手権と世界選手権で滑った」

「五輪でのメダル獲得を真剣に望むのであれば、トップレベルの国際大会での確かな実績を持っていなければならない」

 プルシェンコはそう宣言し、いつもの過剰なまでの自負をのぞかせた。