【1月30日 AFP】ピーナツアレルギーの子どもたちに、アレルギーの原因であるピーナツの粉末を投与することで耐性を獲得できるとする英大医学チームの研究論文が30日、英医学誌「ランセット(Lancet)」に掲載された。ただし研究チームは、決して自宅ではこの治療法を行わないよう警告している。

 英ケンブリッジ大学(Cambridge University)付属病院のアンドルー・クラーク(Andrew Clark)氏らの研究チームは、アレルギーの原因(アレルゲン)となる食物を少量ずつ摂取して耐性を獲得する「経口免疫療法(OIT)」と呼ばれる治療法を用い、重度のピーナツアレルギーの子どもたちに毎日、少量のピーナツ粉末を6か月にわたって与えた。

 その結果、試験に参加した7歳~16歳の子どもたち99人の84~91%が、1日当たり800ミリグラムのピーナツ粉末を安全に摂取できるようになったという。これはピーナツ5個分に相当し、子どもが誤ってピーナツを含む食物を摂取してしまって重篤なアレルギー症状を引き起こすとされる分量よりもはるかに多いという。また、アレルゲン耐性は経口免疫療法を受ける前と比べて25倍になったことになるという。

 研究を主導したクラーク氏は「この療法で、さまざまな重篤度のピーナツアレルギーの子どもたちが、たくさんのピーナツを食べられるようになった」と説明。耐性が得られたピーナツの量はスナック菓子や食事に含有される量より相当多いことから、「子どもや親たちを死に至ることもあるアナフィラキシーショックの恐怖から開放できる」と語った。

 実際に試験に参加した家族からも「日常生活が劇的に変化した」との声が寄せられているという。

 ただ、研究チームは決して自宅でこの手法を試さないよう注意を促している。経口免疫療法を行った子どもたちには、ほとんどは口腔内に軽度のかゆみが表れる程度だったが、5人に1人の割合で「有害事象」が見られた。

 論文に査読コメントを寄せた米ミシガン大学(University of Michigan)食物アレルギーセンターのマシュー・グリーンホート(Matthew Greenhawt)氏も、今回の研究では「例外的に有効性」が示されたが「まだ実験段階にある」と指摘。「OITによって長期的な耐性が獲得できるかどうかは不明」だと述べている。

 ピーナツアレルギーは子ども約50人に1人の割合で見られ、食物アレルギーによる死亡例の原因では最も多いとされる。アレルギーに苦しむ子どもたちは世界で1000万人に上り、症状は唇の腫れといった軽いものから、呼吸困難、重症な場合はアナフィラキシーで死に至ることもある。(c)AFP