【1月24日 AFP】2013年の第63回ベルリン国際映画祭(Berlin film festival)で最優秀男優賞を受賞したボスニア・ヘルツェゴビナの男性、ナジフ・ムジチ(Nazif Mujic)さん(43)が、ドイツ当局から難民申請を却下されたことが23日、独メディアの報道で明らかになった。

 ムジチさんはボスニア・ヘルツェゴビナに暮らす少数民族ロマで、鉄くず拾いで生計を立ててきた。同国出身のダニス・タノビッチ(Danis Tanovic)監督がロマの一家の厳しい生活を事実そのままに描いた映画『鉄くず拾いの物語(An Episode in the Life of an Iron Picker)』に、自分自身の役で主演し、銀熊賞(男優賞)を受賞。同映画は最高賞に次ぐ審査員大賞も授賞し、銀熊賞ダブル受賞を達成した。

 しかし、23日の独紙ターゲスシュピーゲル(Tagesspiegel)によると、世界を驚かせた受賞から9か月後の昨年11月、ムジチさんは再びドイツ・ベルリンを訪れ、難民申請した。現在、妻と3人の子と共にベルリン市内の施設で生活しているが、当局から3月9日を期限に国外退去を命じられたという。

 ムジチさんは同紙に「難民申請が認められないなら、(受賞トロフィーの)銀熊は返上する」と述べたという。

 ムジチさんはベルリン国際映画祭後、ボスニア・ヘルツェゴビナ北部の自宅でAFPの取材に対し、鉄くず拾いの仕事に戻ったが家族を養うのがやっとの生活だと窮状を訴えていた。当時、ムジチさんは「1日に5~10ユーロ(約700~1400円)かせいだ。子どもにパンを買ってスープを作ってやるのがやっとの収入だ。子どもたちは道端で物乞いをしているが、私にはどうすることもできない」と語っている。(c)AFP