浦和時代は髪が長く、今よりも挑発的な目線をしている。芯にあるやんちゃさがにじみ出ており、「浦和の王子様」と呼ばれていたのも腑に落ちる。

 日本を飛び出し、より厳しい競争に身を置いたことで、そこに逞しさが加わった。あごががっしりとし、太い眉から燃え上がるような迫力を感じさせる。競り合いを繰り返すたびに、体だけでなく、心もタフになっていったのだろう。

 さらに2010年南アフリカW杯直前、イングランドとの親善試合からキャプテンマークを巻くようになったことで、責任の重さがさらに精神を磨き上げた。気がつけば、その穏やかな目線からは余裕すらも感じさせるようになった。

 今季、長谷部はニュルンベルクに移籍し、中心選手としてチームを引っ張るという新たな役割に挑んでいる。ロスタイムに失点するなど、ぎりぎりのところで引き分けに終わる試合が多く、未だに勝ちがない状況だ。プロになってから、これほど苦しい試合が続くのは初めてかもしれない。だが、その感情の揺さぶりが、さらに長谷部を強くするだろう。

 2014年ブラジルW杯を迎えたとき、その顔立ちには、ニュルンベルクの地で得たものが刻まれているに違いない。(c)AFPBB News/木崎伸也