【10月9日 AFP】妊娠期間の9か月中、超音波検査は1回だけ、産婦人科医に診てもらう必要もない──スウェーデンでの妊娠中の健康管理はこんなにシンプルだ。

 妊娠したら産科での定期健診が欠かせない大多数の先進諸国とはだいぶ違うかもしれないが、医師ではなく助産師が妊婦のケアを担うスウェーデン・システムの長所は証明されている。

 子ども支援の国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)」によれば、スウェーデンは「母親になるのにベストな国ランキング」で、フィンランドに次ぐ世界2位の評価を受けている。

「欧州周産期健康報告書(European Perinatal Health Report)2010年版」によれば、スウェーデンの新生児死亡率は出生1000人当たり1.5人と、欧州でアイスランドに次ぐ低さ。出産時の母親の死亡率も、出産10万件当たり3.1人とかなり低い。

 スウェーデンでは妊娠中の母親と胎児のケアは助産師に任されている。それが唯一の妊婦健診であり、費用は国の医療給付で賄われるので無料だ。「助産師が異常に気付けば、すぐに医師が呼ばれる」と、首都ストックホルム(Stockholm)の助産師ソフィー・ローフトマン(Sofie Laaftman)さんは言う。

 妊娠は病気ではないと、スウェーデンのイエーテボリ大学(Gothenburg University)サールグレンスカ・アカデミー(Sahlgrenska Academy)のマリー・ベリ(Marie Berg)教授は言う。ローフトマンさんも同じ意見だ。40歳未満の大半の女性の体は健康で出産できる状態で、妊娠とは自然な過程なのだから、医療的な診察は必要ないと語る。

 医療技術の社会影響評価(テクノロジーアセスメント、TA)を行う国際プロジェクト「コクラン共同計画(Cochran Collaboration)」が8月に公表した研究報告では、妊娠中に合併症がない大半の女性は、産婦人科医よりも助産師に診てもらったほうが有益だと結論付けている。助産師のケアによって早産を減らせるという。スウェーデンでは未熟児で生まれる新生児はわずか5%だ。

 助産師は分娩も介助するが、これは妊娠中にケアをしてくれた助産師とはまったく別のチームが行う。医師は分娩中に合併症が起きた場合、あるいは妊婦が硬膜外麻酔を希望したときにだけ介入する。約5割の出産がこのケースに当たるという。

 スウェーデンにおける助産師の活躍は18世紀にまでさかのぼる。欧州の大部分では現代医療の発達によって助産師の仕事が医師に取って代わられてきたが、スウェーデンでは医師の了解や強力な連盟のおかげで、助産師の伝統的な役割は失われなかった。

 助産師の役割に疑問が呈されてこなかったのには、その実績にも負うところが大きい。帝王切開の割合はスウェーデンでは比較的低く、2011年には約17%だった。出産時の会陰切開術も10%だ。

「コスト的にも効率的なシステム」だとベリ教授は言う。医師が妊婦を診察する国では「往々にして検査や超音波の回数が膨れ上がり、報酬目当ての診療の糸口にもなりかねない」とベリ教授は指摘する。 (c)AFP/Camille BAS-WOHLERT