【9月2日 AFP】経済危機の影響が最も深刻な街で、失業者にならずに済むための答えは「犬用スナック」だった――。こんな思いも寄らない進路を現実に歩いた若者が、スロベニアにいる。学生時代にはジャーナリスト志望だったナストヤ・ベルドニク(Nastja Verdnik)さん(26)だ。

「よく愛犬にビスケットを作ってあげていたけれど、それを仕事にするなんて夢にも思わなかったわ」と、スロベニア北部マリボル(Maribor)にある小さな自分の店でAFPの取材に応じたベルドニクさんは語った。

 首都リュブリャナ(Ljubljana)にあるリュブリャナ大学(Ljubljana University)でジャーナリズムを専攻したベルドニクさんは、昨年大学を卒業したものの、夢だった報道関係での就職はかなわなかった。マリボルの失業率は18.1%で、スロベニア最悪。リュブリャナの12.6%より高い。

 そんな折、職業紹介所で若者の起業支援プログラムというものがあると知ったのだ。かねて友人の飼い犬のためにもビスケットを作り、地元のペットショップで少量を売ってもらったりもしていたベルドニクさん。「犬のためのパン屋さん」というアイデアを提案してみたところ、すぐに支援が決まったという。

 こうして、スロベニア初の犬専用ベーカリー「Hov Hov」が誕生した。店名は犬の鳴き声を表すスロベニア語だ。店内には、ベルドニクさん手作りの犬用のビスケットやマフィン、ケーキが並び、アレルギー持ちの犬に対応した商品も揃っている。

 ベルドニクさんによると、スロベニアでは9歳以下の子供の数より、登録された飼い犬の方が多いという。犬にとって格好の遊び場となっているマリボル最大の公園の入り口を選んで今年6月にオープンした「Hov Hov」の業績は右肩上がりで、9月には首都リュブリャナにも支店を新設することが決まっている。将来は、隣国クロアチアやオーストリアなどへの海外進出も考えているそうだ。(c)AFP