【7月16日 AFP】トルコの最高裁判所にあたる上訴裁判所は13日、クルド人夫妻が娘の名前に、同国で長きにわたり禁止されてきた言葉「クルディスタン(Kurdistan)」を使用する権利を認めた。現地メディアが伝えた。クルド人の民族的故郷を意味する「クルディスタン」という言葉は同国で扇動的だとされていた。

 同国の通信社ドーガン(Dogan)によると、上訴裁判所は、子どもをクルディスタンと命名するのは「社会に対する侮辱」との判断を示し、生後23か月になるトプラックさんの娘の名前に、同国シャンルウルファ(Sanliurfa)県で広く見られる「ヘリン(Helin)」とするよう命じた一審の判決を覆した。上訴裁は、名前の由来が外国のものだとしても子どもを命名する権利はあらゆる親にあるとして、一審の判決を破棄した。

 インド・ヨーロッパ語族のクルド人のルーツは、古代ペルシャ(Persia)にあったメディア王国(Medes)にさかのぼる。大半はイスラム教スンニ派を信仰しており、イランやイラク、シリア、トルコにまたがる山間部に居住し、独自の言語や文化、社会制度を維持している。アラブ人やトルコ人、ペルシャ人と異なるため、クルド人は居住地域が分布している4か国全てから政治的脅威とみなされている。

 トルコでは2002年までクルド語の使用や、クルド語を学校で教えることが禁止され、「クルド(Kurd)」「クルド(人)の(Kurdish)」という言葉については公の場での使用が禁じられていた。当局はこうした言葉の使用を、同国で非合法化されているクルド人武装組織「クルド労働者党(Kurdistan Workers' PartyPKK)」への支持表明と位置付けていた。PKKはクルド人独立国家の樹立を目指し、最近では同国南東部のクルド人居住地域の自治権を要求している。

 今年3月、終身刑で服役中のPKK創設者、アブドラ・オジャラン( Abdullah Ocalan)氏が歴史的な停戦を表明し、PKKとトルコ政府は危ういながらも和平プロセスの構築に向けて一歩を踏み出した。停戦の一環でPKKは、推計2000人の戦闘要員をトルコからイラク北部の拠点に撤退させることで合意した。

 PKKは1984年、支配地域のトルコ南東部で反政府武力闘争を開始。同国治安部隊との衝突で、これまでに推計4万5000人余りが死亡している。(c)AFP