【7月9日 AFP】ローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王は8日、アフリカや中東から欧州を目指す数十万人の移民が漂着してきたイタリアのランペドゥーザ(Lampedusa)島を訪問し、難民の窮境に対する世界の無関心を改めるよう呼び掛けた。

 法王がローマ(Rome)の外を訪問したのは、3月の就任から初めて。漁港のそばで開かれたミサでの説教で法王は、「これほど多数の兄弟姉妹に対する無関心への許しを請う」と述べた。移民が使った後に放置した数十の船が見える場所で、欧州へ入ろうとして海上で命を落とす年間数百人の人々に哀悼の意を表し、同島を訪れたのは「良心を呼び覚ます」ためだと語った。

「幸福を追求する文化により、われわれは自分のことばかり考え、他者の苦しみに鈍感になってしまっている」と法王は指摘し、「兄弟としての責任」を促すと同時に「世界中に広がった無関心」を戒めた。

 フランシスコ法王は形式にこだわらないスタイルで知られるが、今回の訪問でも、通常の法王の訪問には付き物の仰々しい慣習は控えられた。政治家や行政の高官との会談はなく、移動手段の「パパモビル」には地元住民から借り受けたフィアットが使われた。また、法王の訪問は数か月前に予定されるのが常だったが、今回の訪問が発表されたのは先週のことだった。

 ランペドゥーザ島へは1999年以降20万人以上が上陸しており、欧州に不法入国する移民たちの最大の入り口の1つとなっている。法王到着の数時間前にも、166人の移民を乗せた船が同島に着いたばかりだった。国連難民高等弁務官事務所(UN High Commissioner for RefugeesUNHCR)によると、今年に入ってから、北アフリカから欧州へ渡ろうとした40人が死亡したとみられる。2012年には、約500人の死者または行方不明者が報告されているという。(c)AFP/Andrea Rosa