【5月30日 marie claire style】「007」シリーズ生誕50周年!・・・といわれても、それほどピンと来ない筆者だが、それでも存分に楽しめた本作。

 ダニエル・クレイグ(Daniel Craig)による新生ジェームズ・ボンド(James Bond)も3作目。当初はファンから大不評だった金髪碧眼のジェームズ・ボンドも、『007/カジノ・ロワイヤル』の高い評価とともにすっかり定着してきた。

 一時期、BMWなどに浮気していたボンド・カーは、本家のアストンマーティン(AstonMartin)に戻り、監督やメインキャストを執拗なほどに英国人でがっちり固めているのにも好感が持てる。そのあたりのプロデュース・ワークがファン心をくすぐっているのだろう。

 同時に、衣装をトム・フォード(Tom Ford)にまかせたり(本作では冒頭のアクション・シーンだけで85着のトム・フォードのスーツが用意された!)、あのテーマ音楽を現代的にリファインしたりと、きちんとシリーズ未見の観客でも楽しめる作りにしている。

 物語は、イスタンブール市街での度肝を抜かれるカーチェイスからはじまる。諜報部員の個人情報を盗んだ敵を追うジェームズ・ボンド。壮絶なカーチェイス、バイクチェイスの後、猛スピードで走る列車上での死闘が繰り広げられ、そして悪夢のような川へのダイブ。まさに“スカイフォール”からはじまる本作。一度スカイフォールにより「死んだ」はずのジェームズ・ボンドの「復活」までの道のりを描いている。

 戦いの場は、上海、マカオ、長崎県の軍艦島(的な廃虚の島)へと次々に移り、最後は「007」の本拠地ロンドンへ!そして“スカイフォール”の本当の意味が明らかになったとき、最後の死闘が幕を開ける。

   本作の監督は鬼才サム・メンデス(Sam Mendes)。20世紀末を代表する傑作『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞監督賞を獲得した寡作の天才が「007」のバトンを受け取ったと聞けば、映画ファンとしては見過ごすわけにはいかない。ちなみに余談ではあるが、サム・メンデス監督といえば、キャメロン・ディアス(Cameron Diaz)、キャリスタ・フロックハート(Calista Flockhart)、レイチェル・ワイズ(Rachel Weisz)など数々の大物女優との浮き名を流した後に、ケイト・ウィンスレット(Kate Winslet)と結婚するという、業界きっての“モテ系”監督。ある意味、ジェームズ・ボンドを描くには最適な人選といえるだろう。

   そしてさらに、トーマス・ニューマン(Thomas Newman)の音楽が冴え渡っている。『ショーシャンクの空に』『セント・オブ・ウーマン』『ファインディング・ニモ』、そして先日紹介した『ヘルプ』など数々の名作の音楽を手がけている天才音楽家だ。現代的かつリッチな音楽世界も存分に楽しめる。

 とはいえ、公開時は批判的な意見も出ていた。確かにストーリー展開がマンガみたいなところもあるし、ボンド・ガールの扱いについてはちょっと思うところもある。敵も強いんだか弱いんだか良くわからない。だが、そんな細かいことを気にしていてはこの作品は楽しめない。

 新宿の映画館で観ていた僕の隣に座ったオネエ系のお兄さん(お姉さん?)たちは、ダニエル・クレイグの裸体が登場するたびに、キャッキャとはしゃいでいた。確かに、トム・フォードのスーツ姿か、裸体か、という2択のダニエル・クレイグの肉体美を見ているだけでとりあえず画面がもってしまう。そう、これもまた映画。

 オトナもコドモもオネエ系も。みんなで観たら盛り上がること必至の本作(特にオネエ系は)。ぜひジタク映画祭でもお楽しみ頂ければと。

■プロフィール
川村元気/Genki Kawamura
1979年生まれ。映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』などを製作。2010年、米The HollywoodReporter誌の「Next GenerationAsia 2010」に選出され、11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。そのほかにもルイ・ヴィトン・プレゼンツのCGムービー「LOUIS VUITTON‒BEYOND‒」のクリエイティブ・ディレクターなどもつとめる。最新映画として、森山未來と星野源が声優として共演した、アニメ映画『聖☆おにいさん』が5月10日(金)より全国公開。初の著書『世界から猫が消えたなら』(マガジンハウス刊)は、2013年本屋大賞にノミネートされ、現在25万部突破のベストセラーとなっている。 (c)marie claire style

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