【5月21日 AFP】米上院の常設調査小委員会は20日、米アップル(Apple)が課税管轄権の及ばない多数の子会社を用いて複雑なネットワークを構築し、同社の数百億ドル(数兆円)規模の利益に掛けられるべき税金の支払いを逃れていたと結論づけた。

 21日に公聴会を開く上院小委員会は、米アップルがなんらかの違法行為をしていたと糾弾するまでには至らなかった。だが、調査小委員会のカール・レビン(Carl Levin)委員長と、委員のジョン・マケイン(John McCain)上院議員は、アップルなどの多国籍企業が米国外での収益に対する米国の課税を逃れるために利用している抜け穴をふさぐ新たな措置が必要だと主張した。

 レビン委員長は「アップルは数百億ドルの資産を保有するオフショア企業を複数作ったが、これらの企業は税務上の居住者としてどの国にも申告していなかった」と述べた。またマケイン委員は「アップルのような企業が米国での課税を逃れるために使っている、極めて疑問の残る節税対策」と表現した。

■「アイルランド拠点に税金逃れ」と上院報告書

 上院の報告書によると、アップルは、知的財産資産を国外に移転することで租税回避地に利益を移転する「費用分担契約」を利用した。ある子会社は「300億ドル(約3兆700億円)の純利益を報告したものの、税務上の居住地をどこにも申告せず、法人税を申告せず、どの国にも5年間にわたって法人税を支払っていなかった」という。

 また、アップルはアイルランド政府と交渉し、同国法定税率12%を下回る2%の税率での課税を獲得。オフショア子会社ネットワークの拠点としてアイルランドを利用した。2009~12年にかけて、この取引により、アップルは全世界の売上げのうち740億ドル(約7兆6000億円)を米国からアイルランドに移転したという。

 報告書によると、アップルは現在、1450億ドル(約15兆円)を現金および現金同等物で保有しているが、そのうち1020億ドル(約10兆4500億円)は課税を避けるために米国外にあるという。

■クックCEO、米国の税率引き下げを提案へ

 21日の公聴会ではアップルのティム・クック(Tim Cook)最高経営責任者(CEO)が証言を行う予定となっている。クック氏は、米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)に対し、米国外での利益を米国に移転しやすくするための提案を行うつもりだと語った。

「現在は米国に現金を移転する場合、現金の35%を支払う必要がある。これは極めて高い数字だ。0%にするべきだと提案するつもりはないが、税率はリーズナブルでなければならない」と、クックCEOは語った。(c)AFP/Rob Lever