【4月24日 AFP】インドの首都ニューデリー(New Delhi)で4月25日から、これまでと違う映画祭が開催される。主催者によると、ボリウッド映画史上初のキスシーンのほか、検閲によりこれまで未公開だった映像の数々が初めて上映される予定だ。

「カット・アンカット(Cut-Uncut)」と銘打ったこの映画祭では、封切り前に検閲委員会によって削除を余儀なくされた未公開映像を含む無修正の映画を特集して上映する。

 セックス、裸体、社会不安、暴力等の描写は、1952年に制定され、1983年に修正された厳格な法律によって、現在でも劇場映画の映像から削除されている。

 そんな中、ボリウッド映画生誕100周年目にあたる今年、インド情報放送省はよりオープンなイメージを築くべく、この映画祭を企画したという。匿名の同省関係者によると最近まで、長いキスシーンや裸体、政府への反逆行為を描いた映像はすべて検閲で引っかかっていた。「時代の変化とともに、われわれにも新しいアプローチが必要だ。われわれの目的は、時代遅れの検閲制度を変えることだ」とこの関係者は語る。

■キスシーンや宗教対立描いた作品も上映

 映画祭のオープニングは、1933 年制作の映画『カルマ(Karma)』が飾る予定だ。この映画には、ボリウッド映画史上初とみられるキスシーンが含まれており、その部分の映像は当時削除された。また、ヒンズー教徒とイスラム教徒の対立を描き、「極めて挑発的」として上映が禁じられていた2004年制作のドキュメンタリー映画『ファイナル・ソリューション(Final Solution)』も上映される予定。

 最近のボリウッド映画では、セックスを連想させる映像や露出度の高い服装の主演女優が目立つようになったが、セックスはいまだにタブー視されており、キスシーンを含む映画は「アダルト」映画の指定を受け、年齢が18歳を超える人しか見ることができない。

 インドで最も人気があるのは、暴力、恋愛、コメディーを組み合わせた「マサラ・ムービー」と呼ばれる映画だが、最近ではインドの泥臭い現実を描こうとする映画プロデューサーも増えている。

 ディバカル・バネルジー(Dibakar Banerjee)監督は昨年、政治をテーマにしたサスペンス映画『上海(Shanghai)』をめぐって、検閲委員会と争いになった。高位カーストの登場人物が低位カーストの人物を殺す場面など、暴力を描いた2つのシーンの削除を要求されたのだ。上映できなくなることを恐れて監督はその指示に従った。バネルジー監督は「検閲は映画の魂を殺す力がある」と語り、政府はそのような規制をやめる時にきていると述べた。(c)AFP/Rupam Jain Nair