■「地獄へようこそ」

   「サラエボに着いたときは衝撃を受けた」とバズ氏。「われわれの旅はまず、のどかなセルビアの村々を通過することから始まった。そこではすべてが普段どおりだった。あるとき、私たちは落書きで埋め尽くされた橋を渡った。壁には『地獄へようこそ』との落書きがあった。そこから先、私たちは悪夢に入った」

   「サラエボに着いてみると、子ども時代を過ごしたレバノンに少し似ているように感じた。レバノンでは、戦争は私の日常そのものだった。そのことについて考えたこともなかった。だがサラエボにはもっと意識して到着した。それに(子ども時代のレバノンの)ベイルート(Beirut)では、最悪の時期でさえ、街を離れて安らぐ場所を探すことができた」

   「しかしサラエボは死のわなだった。食べるものが何もなく、暖を取る手段も一切ない近代都市。狙撃手は、パンを買いに走る人びとを撃った。シリアでも他の戦闘区域でも、人びとは狙撃手を妨害する作戦を思いついたものだった。たとえば狙撃手の視界を遮るために道路の上空に黒い布をつるすなどだ。だがサラエボにはそういったことが1つもなかった」

 ウラジーミルさんと同じように、カメラマンの記憶にも、ボスニアの凍てつく冬はしっかりと刻み込まれていた。(c)AFP/Roland de Courson