【10月19日 AFP】オンラインではどのように振る舞うべきか――インターネット上で匿名のユーザーから受けたいじめが元で15歳の少女が自殺する事件が起きたカナダで、ネットマナーをめぐる国民的議論が起きている。行き過ぎた行為については犯罪として取り締まるよう求める声も上がっている。

 自殺したアマンダ・トッド(Amanda Todd)さん(15)は死の直前、米動画サイトのユーチューブ(YouTube)にいじめの一部始終を告白する動画を投稿していた。

 世界中の数百万人に視聴されたこの動画の中でアマンダさんは、7年生(中学1年)のときにビデオチャットで知り合った相手に求められ、胸をちらっとはだけて見せた過去を明かす。ところが1年後、アマンダさんは匿名の人物から「自分のために『ショー』をやらなければ、胸の写真をばら撒く」と脅迫を受けた。要求を拒否すると、アマンダさんの胸の写真が、当時暮らしていたブリティッシュコロンビア(British Columbia)州の家の近所一帯にばら撒かれたという。

 以降、アマンダさんは不安神経症、うつ病、パニック障害に苦しむようになった。引越したが、麻薬とアルコールに依存するようになり「毎晩泣いた」という。この写真のために友人ができず、自傷行為を繰り返した。転校した先の学校でも、ある男性が原因で他の生徒たちの目の前で暴行を受け、また転校した。

   やまないネットいじめに何度も自殺未遂を試みたアマンダさんは、「私には誰もいない。私には誰かが必要」と訴えて終わる動画をユーチューブに投稿した後、10月10日に自殺した。

■国民的議論を喚起、アノニマスが「犯人特定」

 アマンダさんの死は、カナダ全土の学校から家庭、マスコミ、政治集会までを巻き込む論争を生んでいる。IT知識は豊富だが人生経験は少なく、そのぶんネット上のリスクに対する認識が甘い若者たちが、安全にネットを使えるようにするためにはどうしたらよいか?

 ブリティッシュコロンビア州のクリスティー・クラーク(Christy Clark)州首相は、ネットいじめを犯罪化するべきだとまで提案している。

 一方、ハッカー集団「アノニマス(Anonymous)」は15日、アマンダさんを最初に脅迫し「ショーをしろ」と要求した人物について、バンクーバー(Vancouver)に暮らす男性(32)だと特定したと発表した。この男性は、十代の少女たち向けのウェブサイトに頻繁にアクセスしていたとされる。  だが、アマンダさんの母親はカナダのメディア取材に対し、娘をいじめていた人物は米国在住だと信じていると語った。また、アノニマスに犯人だと名指された男性は、地元メディアの取材に事件への関与を否定している。

 また、カナダ連邦警察は「自警主義は犯罪行為につながる危険性がある」として犯人探しをする人々に警告。18日には、こうした行為が警察の捜査を妨げていると批判した。同日の連邦警察発表によると、捜査はインターネットとソーシャルメディアを中心に進められているが、アマンダさんの事件を悪意や商業目的で利用する者たちもいるため難航しているという。(c)AFP