【6月26日 AFP】セックスは基本的人権の1つだが、高齢者の介護施設では往々にして入所者たちの性生活は否定される。しかし、年老いてもセックスの喜びは変わらず、むしろ高齢者たちにとっては残された数少ない楽しみのひとつでもあると、オーストラリアの研究者らが専門誌「Journal of Medical Ethics(医療倫理ジャーナル)」に発表した論文の中で指摘している。

 科学的根拠に基づいた介護を実践する豪高齢者施設「Australian Centre for Evidence-Based Aged Care」の職員らによる論文によると、自宅では性生活を楽しんでいた初期の認知症患者も、施設に入所したとたん状況は一変する。施設におけるプライバシーの欠如、職員らが持つ老いに対する先入観、さらに自分が行う行為への承諾意思を示すことが困難な入所者について起こりうる法的問題を施設側が恐れていることなどが、主な要因だ。

 しかし、論文は「人間関係の形成、肉体的な親密関係、性的な表現、これらはみな基本的人権であり、高齢化の過程においてもごく自然で健康的なことだ」と主張する。

 だが、ほとんどの介護施設で、入所者が性生活を続けることを念頭においた指針はなく、職員訓練も行われていない。

 高齢の認知症患者についてはインフォームドコンセントを得る基準の法的設定が難しいという点は、論文筆者らも認めるが、入所者の性生活を否定する根拠にはならないと論文は結論付けている。(c)AFP