【2月26日 AFP】上海っ子らしさの象徴といえば、早口の上海語だ。しかし、2000万人が住む大都会でこの「方言」を話す人は減り続けている。

   「言葉は生き物。古くなれば死んでしまう」と語る上海大学(Shanghai University)元教授の言語学者、銭乃栄(Qian Nairong)氏(66)は2007年、すたれゆく方言を記録する試みのひとつとして上海語辞典を出版した。銭氏によると、1990年代に生まれた若者たちは上海語をあまりうまく話せない。

 1949年の中華人民共和国建国以来、中国政府は公用語として北京語を推進する一方で、学校教育などでの方言の使用を止めさせ、90年代にはメディアからも上海語が消えた。その結果、上海でも、自分たちの言葉である上海語を流暢に話せない若者が多い。上海以外の土地からやって来る労働者が増えたり、市が国際化に力を入れていることも、上海語をいっそう脇へと追いやっている。

 上海っ子コメディアンの周立波(Zhou Libo)氏は、上海語を取り混ぜた笑いで、上海語に対する人々の興味を復活させるのに一役買っている。「方言が失われるということは、その土地の文化が失われていくということ。なんで僕たちの子どもが北京語を話さなければいけないんだ?そんなばかなことってないよ」とトークショーで語っている。

 銭氏は北京語の影響による発音の変化も残念がっている。「発音が混じりだすと、言語はたちまち変わってしまう」のだ。40代以上の上海人が話しているのは今も主に上海語だが、銭氏いわく1980年代に聞かれたような上海語はもはやお年寄りからか、都心からかなり離れた郊外に行かないと耳にしない。また、例えば「川に浮く死体」とか「死刑囚のお化け」といった上海語独特の罵り言葉も消えつつある。

 逆に年配の上海人、特に公教育を受けたことのない高齢者は北京語を理解できない。市内にある一流大学、同済大学(Tongji University)では有志が上海語クラスを立ち上げた。ボランティアの学生たちがお年寄りと意思疎通できなかったからだ。

 上海人たちはそう簡単に上海語をあきらめない姿勢を見せているが、なかなか前途多難だ。市当局は最近、バスの車内放送に上海語を使い始めた。地下鉄も続く予定だ。上海航空(Shanghai Airlines)では、市の観光名所を上海語で紹介する放送を始めたが、若い乗務員には上海語の発音訓練をしなければならなかった。

 1990年代、中国全土の政策の一環で地元当局はラジオとテレビで上海語の使用を中止した。上海語による人気ラジオ討論番組のある司会者は、番組が復活するまで10年間、当局に掛け合ってきた。しかし昨年、この討論番組の欠員を補充しようとした際には候補者を探せず、一般公募せざるをえなかった。局内ではこの貴重な上海語話者たちを「パンダ」と呼ぶ冗談が飛び交っているという。(c)AFP/Bill Savadove