【8月21日 AFP】ノルウェーで20日、前月の銃乱射事件の生存者とその親族ら約750人が、4週間ぶりに事件のあったウトヤ(Utoeya)島を訪れた。

 69人が死亡した7月22日のウトヤ島の銃乱射事件は国民に深い衝撃を与えた。生存者たちは、事件を乗り越えるためのきっかけを見つけようと、同島への再訪を決意した。訪問を前に、警察が事件の痕跡を消す努力をしたものの、生存者たちの多くにとって、事件はいまだ生々しい出来事だった。

■「あいつは、ぼくに銃口を向けた」

 アンネシュ・ベーリング・ブレイビク(Anders Behring Breivik)容疑者の発砲で肩を負傷したエイドリアン・プラコン(Adrian Pracon)さん(21)は20日朝のツイッター(Twitter)への投稿で、「人生で2番目の最悪の日になるだろう」と述べた。

 ウトヤ島へ向かうバスの中から電話取材に応じたプラコンさんは「とてもつらい日になることはわかっているけれど、将来の重荷を軽くするために不可欠なことだということもわかってる」と述べ、「前進するためにはあの島を見なければ。それに、友人たちと一緒だということもとても重要だ」と語った。

 目撃者によると、ブレイビク容疑者は、ウトヤ島のサマーキャンプ参加者たちをだますために警察官の制服を着てセミ・オートのライフルと拳銃を所持し、オスロ(Oslo)であった爆弾爆発について知らせるために島に来たと語り、集まった人びとに向かって発砲し、1時間にわたって逃げる人びとを追跡し、負傷者をみつけては殺害したという。

 プラコンさんはあの日、ブレイビク容疑者に2度遭遇した。

 プラコンさんは当初、服を着たまま海に飛び込んだが、対岸までは泳げないと察して島に引き返した。

「岸に戻るとあいつが立っていた。ぼくから5~10メートル離れたところで、泳いで逃げようとしている人びとに向かって発砲していた。そしてあいつは振り返り、ぼくに銃口を向けた」

「ぼくは疲れ切っていた。だから言えたのはひとこと『撃たないでくれ』。彼は立ち止まり、ほんのわずか何かを考えてから、立ち去った」

 プラコンさんの2度目の遭遇は数分後だった。数人の若者たちが集まっていた所だった。

「ぼくは横たわり、死んだふりをした。すると本当に死んでいるか確かめるために、あいつはぼくを撃った。頭を狙ったのだろうけれど外れ、銃弾はぼくの肩にあたった」

■「友人たちの最期の場所を見ておくため」

 岩場に隠れてから海に飛び込んだPer Anders Langeroedさん(22)は、島への訪問後にNRKラジオの取材に、「7月22日の出来事以外でもウトヤ島を記憶しておきたかったから、島に戻ったんだ。あの日は、叫び声とパニック、苦しみ、それしかなかった」と語った。

「再訪で、思っていた以上にましな気分になった。死んだ友人たちが最後の瞬間を過ごした場所を見ておくことのは、大事なことだった」

 訪問には医師や精神科医、キリスト教とイスラム教の聖職者らの大規模な一団もサポートのため同行。ノルウェーのイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)首相も参加した。ストルテンベルグ首相は、来年のサマーキャンプでは同島に宿泊することを約束した。

 前日の19日には、事件の犠牲者の家族ら500人が、ウトヤ島を訪問していた。両日とも、報道陣の同行は許可されていない。(c)AFP/Pierre-Henry Deshayes

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