【8月4日 AFP】『サイコ(Psycho)』や『めまい(Vertigo)』などの作品で知られるサスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)監督がそのキャリア初期に製作に携わった映画の一部が、ニュージーランドで発見された。ニュージーランド・フィルム・アーカイブ(New Zealand Film Archive)が3日、発表した。

 発見されたのは、1923年の『ザ・ホワイト・シャドー(原題、The White Shadow)』の6本あるリールのうちの3本。ヒッチコックは、グラハム・カッツ(Graham Cutts)監督のアシスタントとしてこの作品に参加。脚本、美術、編集を担ったという。

 ニュージーランド・フィルム・アーカイブによれば、この作品は、ヒッチコックが携わった作品の中では現存する最古のもので、他のコピーは存在しないとみられている。

 全米映画批評家協会(National Society of Film CriticsNSFC)のデービッド・ステリット(David Sterritt)会長は、「ヒッチコックのファン、学者、批評家にとって非常に重要な発見だ」と語った。

「『ザ・ホワイト・シャドー』の前半にあたる3本のリールは、形を成し始めたばかりのヒッチコックの視覚的なアイデアや物語の伝え方を研究する貴重な機会を与えてくれる」

■今は亡き映写技師のお手柄

 今回発見されたリールは、1993年にアーカイブに寄進されたサイレント映画のコレクションに入っていた。このコレクションは、20世紀前半にへイスティングス(Hastings)の映画館で映写技師として働いていたジャック・ムルタ(Jack Murtagh)さんのもので、彼の死後、アーカイブに贈られた。

 当時、映画館は上映期間が終了すれば、リールを廃棄することになっていたが、ジャックさんは自宅の庭の小屋に集めていた。その結果、永遠に失われるはずだった多くの映画が守られた。

 このコレクションからは2009年、米国のジョン・フォード(John Ford)監督のコメディー『アップストリーム(原題、Upstream)』の世界で1本だけとみられるコピーも発見されており、アーカイブはデリケートなナイトレートフィルムの保存に入念に取り組んでいる。

 ジャックさんの時代にはこれらのフィルムが貴重だという考えはなく、孫のトニー・オズボーン(Tony Osborne)さんによれば、ジャックさんは変わったものを集めていると思われていたという。

「祖父は、今回の貴重な発見で注目を浴びることを静かに楽しんでいるでしょう」(トニーさん)

 3本のリールは今後、ウェリントンのパーク・ロード(Park Road)スタジオで保管される。残り3本の行方は、分かっていない。(c)AFP