【7月29日 AFP】チェコ・ボスコビツェ(Boskovice)にあるワイルド・ウェスト(開拓期の米西部)を模した人気のテーマパークには、「ヤギをレンタル」と銘打たれたアトラクションがある。来園者は、レンタルしたヤギに餌を与えたり一緒に駆け回って遊んだりするだけで、よその国の誰かを少しばかり助けることができるのだ。

 レンタル料は10コルナ(約46円)。地元のNGO「People in Need」がアフリカ農村部の家庭に頑丈でミルクの栄養価も高いヤギを贈るために考案した「アフリカにヤギを(Goats for Africa)」プロジェクトとタイアップし、レンタル料を全額寄付している。

 テーマパークの設立者、ルボス・プロチャスカ(Lubos Prochazka)さんは、「昨年は21万4000コルナ(約99万円)を寄付した。214頭のヤギが贈られたそうだ」と誇らしげに語った。

 1992年に設立された「People in Need」は、アンゴラ、コンゴ民主共和国、エチオピア、ナミビアのほか、アジアと欧州の一部地域で活動している。「アフリカにヤギを」プロジェクトでは、まず、農民たちにヤギの世話やヤギを増やす方法を学んでもらうため、数か月間のトレーニングを受けてもらう。農民にとって、ヤギの面倒をきちんと見れば繁殖して数が増え、得られる利益も大きくなるからだ。トレーニング修了者にはボーナス、つまり寄付金で買われたヤギがプレゼントされる仕組みだ。

 同NGOは、今ではアンゴラにトレーニングセンターとモデル農場を持っている。「内戦で家畜が失われたスリランカでは、農民たちがヤギの飼育になれていたためトレーニングの必要が全くなかった。だからヤギをプレゼントするだけだった」と、募金活動の責任者は語る。ところが、2002年に27年間の内戦が終結し復興の道半ばのアンゴラでは、「(内戦の間に)家畜は1頭残らず殺され、農民たちはノウハウをすっかり失っていた」という。

■ヤギは「不死身」

 先のテーマパークのプロチャスカさんが「People in Need」とのタイアップを考えるきっかけとなったのは、クリスマス通販カタログに掲載されていた「クリスマスボールを頭に載せたヤギ」の写真だった。同団体の広告だった。早速電話をかけ、協力を申し入れたという。

 もともとヤギのレンタルサービスは行っていたが、リードをつけて散歩させる方式をとっていた。そのためリードを持った人間がヤギをうまく扱えず、一度はすべてのヤギが墓地に逃げ込み、警官20人を動員して大捕り物劇を繰り広げた上に墓地を荒らしてしまい、高額の罰金をとられるという苦い経験をした。

 そのため現在では、囲いの中でヤギと遊ぶか、単に餌を買うという方式がとられている。

 時に手に負えないヤギたちだが、プロチャスカさんはヤギが賢く回復力に富んでいるため、アフリカの厳しい環境には理想的だと話した。

「昔、軽油を入れたバケツをそこに置いておいたんだ。すると彼女が半分ほど飲んじまってね。彼女は全身真っ黄色になって動きものろくなった。火を付けたタバコを持って彼女に近づくことを禁止していたんだが、1か月もしないうちにすっかり元気になって、翌年には子どもも産んだよ。ヤギは不死身なんだって、実感したね」(c)AFP/Jan Flemr

【参考】「People in Need」のホームページ(英語)