【7月16日 AFP】アジアでは全般的に生活水準が向上しているにもかかわらず、死を迎える人に対し、適切なケアが提供されていないと指摘する報告が14日発表された。

 英誌「エコノミスト(Economist)」の調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence UnitEIU)によると、世界的に高齢化が進む中、終末期ケアや終末期医療の充実は、各国政府や機関などに求められる急務となっている。

 しかし、シンガポールの慈善団体リーエン・ファンデーション(Lien Foundation)の調査に基づき、死を迎える人に施されるケアの質を評価した「クオリティー・オブ・デス(QOD、死の質)」インデックスで、アジア各国の順位は低い。

■死の質1位は英国、日本は23位

 比較された40か国中の最下位はインド。下位10位には中国、マレーシア、韓国が並んでいる。経済大国の日本も、台湾14位、シンガポール18位にも劣る23位にしかランクインできていない。

 一方、トップは「ゆりかごから墓場まで」の英国。2位以下はオーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、ベルギー、オーストリア、オランダ、ドイツ、カナダ、米国と続く。

 報告書は「クオリティ・オブ・ライフという言葉は広まったが、クオリティ・オブ・デスは別問題。医療政策に緩和ケアを組み込んでいる国は、最先端の医療システムを要する富裕国を含めてほとんどない」と批判している。また「緩和ケアおよび終末ケアに特化した施設」が国の医療制度の一部になっていない点や、ドラッグの違法取引や医療従事者への訓練不足が足かせとなって、世界的に鎮痛剤が適切に行き届いていない点が指摘された。

 さらに文化的側面として、死に対する認識やタブーが、緩和ケアの障害になっている点も挙げられた。

■緩和ケア必要な患者は年1億人、受けているのはわずか8%

 世界で65歳以上人口は2030年までに8人に1人、合計で10億人に達する。毎年、緩和ケアを必要とする患者は1億人を超えるが、実際にそうしたサポートを受けることができているのはそのうち8%に満たないというデータも報告では引用している。

 医療の発達とともに先進国ほど寿命は延びたものの、少子化と相まって高齢化も進み、また疾患を抱えて長生きするという新たな難題に終末ケアの現場は直面している。(c)AFP/Martin Abbugao
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