【7月25日 AFP】武装勢力や戦闘員が続々と参入し、戦闘が激化するパキスタン北西辺境州。武器商人らによると、この地域ではカラシニコフ(Kalashnikov)銃の値段が急騰している。

 使いやすく故障しにくいカラシニコフは、別名AK-47と呼ばれ、ゲリラや治安部隊、テロ関係者にとっては便利な殺人兵器だ。激しさを増す紛争におびえる市民も、政府からの保護を受けられないためカラシニコフを購入している。

 その結果最近、パキスタンの北西辺境州ではこの銃にかつてないほどの高値が付いている。同州の州都ペシャワル(Peshawar)、そして政府の管轄外にあるアフガニスタンと国境を接する部族地域ダラアダムケール(Darra Adam Khel)では、カラシニコフの値段が1年間で約5倍にも跳ね上がり、最高1500ドル(約14万円)で売られている。
 
「部族地域では戦闘が起きている。(イスラム原理主義組織)タリバンはこの銃を必要としているし、部族もタリバンに対抗するためにこの銃が必要だ」と、ペシャワルの武器商人のハビブ・カーン(Habib Khan)さんは話す。 

 ダラアダムケールは個人が購入する銃の市場としてはアジアで最大規模の町だ。銃の値段は製品の質によって異なる。最も高いのはドイツ製で、最も安いのは地元で製造された銃だ。「中国製カラシニコフが2万5000-3万5000ルピー(約2万9000-4万円)で取引されていた時期もあったが、今は10万ルピー(約11万5000円)まで値段が上がっている」と、この町の武器商人カランダー・シャー(Qalandar Shah)さんは電話でAFPに語った。

 値上がりの主な理由の1つは戦闘が起きやすい状況であること、もう1つは「タリバン化」が進み需要と供給の差が広がっていることだと、シャーさんはみている。シャーさんはこの町で25年間銃を販売している。商売を始めたのは、町が米国とパキスタンのスパイであふれていた頃だ。当時スパイたちは、隣国アフガニスタンに侵攻した旧ソ連軍を撤退させるため、イスラム聖戦士「ムジャヒディン(Mujahedeen)」に資金と武器を提供していた。この時期、パキスタンにはカラシニコフが大量に流れ込んだという。

 カラシニコフは1940年代に旧ソ連のミハイル・カラシニコフ氏が開発した銃で、その後世界中で製造されている。ペシャワルとダラアダムケールでのこの銃の販売価格は、ドイツ製の場合12万5000ルピー(約14万4000円)で、イラン製の場合は3万5000ルピー(約4万円)。ダラアダムケールで製造されたものは1万3000ルピー(約1万5000円)の「お買い得価格」となっている。
 
「これらの銃は以前、地元の市場ではごく低価格で入手できた。だがここ1年ほどで一気に値上がりした」とシャーさんは話す。数年前は銃弾10発でわずか10ルピー(約12円)だったが、今では10発で285ルピー(約330円)もするという。

 アフガニスタンとイラクの、タリバンや国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の支持者、そしてインド管理地域のカシミール(Kashmir)地方の戦闘員でさえも、銃を入手する。タリバンやその他の武装集団にとって、カラシニコフが主要な武器となっているのは軽量で、性能が良いからだとペシャワルのある武器商人は言う。

 この地域の地元住民も、部族の武装集団と戦うため、あるいは自分の財産や家族を守るために武装している。「値段が高かったけれど買った。自宅には銃が不可欠だ。カラシニコフが一番だよ。これがあれば誰も攻撃してこないはずだ」と、ペシャワルの武器販売店で銃を購入していた男性は語った。「無許可でカラシニコフを所持するのは違法だが、この国に合法的なものなんてあるのかい?政府は私たちの安全を守ってくれさえしないのに」

 多数の住民が無許可で銃を持っていることは当局も承知だ。ペシャワルの警官Abdul Ghafoor Afridi氏は、銃の価格が上がった理由の1つは需要の高まりだと説明する。「市民は護身用に購入している。武装集団は、この銃が使いやすく手入れがしやすく携帯に便利だから使っている」とAfridi氏は語った。(c)AFP/Sajjad Tarakzai