【7月10日 AFP】ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領とインドのマンモハン・シン(Manmohan Singh)首相はサミット最終日の9日、北海道洞爺湖で会談し、米印原子力協定について協議した。同協定を巡り、インド国内では連立与党が分裂し、政局が流動化する事態となっている。

 ブッシュ大統領は会談後、「米印原子力協定が両国にとって重要だということを話し合った」と述べた。会談前にホワイトハウス側は、ブッシュ大統領の任期が1月に切れるため、条約批准に必要な時間が差し迫っているとの警告を発していた。
 
 ブッシュ大統領とシン首相が2005年に原子力の平和利用技術の協力で合意したことによって、インドは数十年にわたって閉め出されていた国際的原子力市場に再び参入する機会を得た。

 しかし、インド側では、過剰な親米政策であるとして複数の左翼政党が8日に連立与党からの離脱を発表するなど、シン政権の政策に非難が高まっていた。

 シン首相は、協定の発効手続きの推進については明言しなかったものの、地球温暖化問題やグローバル経済の刺激策について米印両国が協力してゆく必要性を訴え、「インドと米国は、断固たる態度で一致団結しなければならず、そうしてゆくだろう」と述べた。

 そして、親米寄りとの非難に対してシン首相は、国際的課題への米国とインドの親密な協力が「インド国民の意志」であると述べ、「特に、深く物事を考える人々の意志だ」と反論した。

 また、シン首相は、米印原子力協定はインドのエネルギー安全保障上不可欠で、また、高い経済成長率を維持するためにも不可欠だと主張。インドでは、国内エネルギー需要の7割を輸入でまかなっており、また、原子力発電部門の老朽化が進んでおり全面的な整備・見直しが必要となっている。

 会談後の発表では、シン首相が協定の発行手続きを推進するかについては不透明なままとなった。09年1月にブッシュ政権が退陣するまで残り200日ほどとなっており、残り任期内の協定発効は差し迫った課題となっている。

 インド下院(定数545)で59議席を占めている左翼政党グループは、米国の要求する国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)による査察がインドの戦略核兵器の開発計画にとって脅威になるとして、連立与党への協力解消を決めた。

 しかし、シン政権は前週、野党社会党からの支持を取り付けたため、下院での過半数維持は崩れない見通しとなった。

 協定の発効までには、インドは、IAEAによる平和利用の原子炉への国際査察を許可するだけでなく、原子力供給国グループ(Nuclear Suppliers GroupNSG)によって例外的扱いを認められる必要がある。(c)AFP