【7月3日 AFP】北海道の保養地、洞爺湖(Toyako)町では、次週行われる北海道洞爺湖サミット(G8 Hokkaido Toyako Summit)の準備が大詰めを迎えている。しかし、普段は静かな温泉街に大勢の警官がやってきたことで地元には困惑も広がっている。

 世界の指導者を歓迎する旗やのぼりが町内のいたるところではためいているが、テロ攻撃を警戒して全国から続々と警官隊が到着する中、サミットを歓迎する雰囲気はいまひとつ盛り上がっていない。

 畜牛農家の男性(33)は「こんな田舎では警察なんてほとんど見ないんだけど、今は石を投げれば警察官にあたるって感じでしょ」と笑う。「サミット当日に向けて警官の数はもっと増えると聞いたけど、勘弁してほしいよ」

■道内に警官2万1000人、減る観光客

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領など主要8か国首脳に加え、招待国15か国の首脳が集まり、7月7日から9日にかけて開催される北海道洞爺湖サミット(G8 Hokkaido Toyako Summit)のため、洞爺湖周辺および道内には約2万1000人の警官が動員されている。活火山・有珠山(Mount Usu)のふもと、ドーナツ型をした洞爺湖の一角にある洞爺湖町の人口はわずか1万700人。サミット自体は町から離れた山頂のホテルで行われる。

 バーも経営しているという男性は、この1か月で客足が4割近く落ち込んだと語る。「こんなに警官がまわりに沢山いて見回ってたら、飲みに行こうって気にならないよ。サミット、サミットって騒ぐほうがおかしいんじゃないの」

 ホテルなど宿泊施設の従業員も、サミット警備のあおりを受けて観光客が減っているとこぼす。「車で町に入ったら白バイが前を走っていた。後ろにはパトカーがいて、先導されてる気分だったよ」とあるレストラン店主は言う。「今ならここが世界一安全な町だよ」

 町内の道路には機動隊のバスが行き交い、住民がゲートボールをする脇にはパトカーがずらりと列をなして駐車している。

 土産物店で働く女性は「『サミット?だからどうしたの?』と言いたい。かえって迷惑。あちこちに警官がいて、職務質問したり、検問で車を止めたり。それが彼らの仕事なんでしょうけど、じろじろ見られるのは我慢できません」と語った。

 胸元に「Love Earth」をロゴにしたG8の宣伝バッジをつけたこの女性は、サミット会場周辺の道路がすべて作り直されたことにも触れ、政府の環境に対する姿勢に疑問を感じると話した。「みんなエコ、エコって言っているけど、やっていることはエコじゃないんです」

 しかし観光産業で働く人たちには、サミットをきっかけに保養地として町が有名になることを期待する声もある。

 湖で貸しボート業を営む男性(73)は警備を敬遠して観光客が減っているのは確かだとしながらも、「ただ、そんなこと言ったら警備にきている方に悪い。感謝しないと。テロでも起きたらここは危険な場所だと世界中に思われるから」と語る。この男性は、8年前の有珠山噴火によって打撃を受けた洞爺湖の観光が、サミットを機に復興することを期待している。

■湖周辺のキャンプ場には陸自のテント村が

 とはいえ現時点で湖付近の全キャンプ場を占拠しているのは、陸上自衛隊のオリーブグリーン色のテント約70張と、約30台の車両だ。

「あくまで警察が警備担当です。われわれの任務は、ヘリコプター輸送にかかわる自衛隊員に食事その他の後方支援を提供することです」と派遣部隊を率いる3等陸佐は説明する。

 警察はまた、国際メディアセンターが設置されているスキーリゾート、ルスツにも厳戒態勢を敷いている。

 ルスツの農協に勤務する男性(44)は、これほど多くの警察の車を一度に見たのは生まれて初めてだと語った。「みんなで花を植えたりしたけど、サミットは(わたしたちに)直接関係がないからね。国際メディアセンターといっても、わたしたちのことを取材するわけじゃないし」(c)AFP/Miwa Suzuki