【2月22日 AFP】野生動物が保菌するウイルスの変異と、抗生物質に耐性を持つバクテリアの出現により、過去数十年間に致死的な新種の伝染病が多数発生したとする研究報告が、英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。

  4つの研究機関から成る研究グループは、1940年以後に確認された新種の伝染病の発生地点335か所を3年間にわたり追跡調査し、世界初の伝染病地図を作成した。新種の伝染病には、世界で6500万人以上が感染したエイズ(HIV/AIDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)が含まれる。

 その結果、新種の伝染病の発生件数は過去50年で約4倍に増えたことが判明した。うち60%は動物からヒトに感染する動物原性感染症で、その大半は哺乳類が感染源だった。たとえば、エイズはチンパンジー、SARSは中国に生息するコウモリ、エボラ出血熱はアフリカに生息するオオコウモリが、それぞれのウイルスを最初に保菌していたとされている。

 そうした新種の病原体がヒトに感染した場合、免疫がないために致命的となる。研究によると、人口の増加が顕著な上に野生動物に触れる機会が多い熱帯の国々で、今後こうした新種伝染病が大流行する可能性が極めて高いという。

 研究に参加したコロンビア大学(Columbia University)関係機関の研究者は、新種の伝染病が頻発する要因を「野生動物の生息地域が狭まり、人口が増え続けることで、両者が接触する機会が増えた」と説明。さらに、新種の動物原性感染症が発生する可能性が極めて高い地域を、家畜中心の生活を送る東アジア、インド亜大陸、アフリカのニジェールデルタ、アフリカのグレート・レイク地域と予測する。

 また、新種の伝染病ウイルスの20%以上は、超薬剤耐性結核菌(XDR-TB)、クロロキン耐性を持つマラリアなどのように、薬剤耐性を持っており、こうした傾向は特に西欧や北米で顕著だ。

 1980年代に新種の伝染病が急増したのは、エイズの流行に起因した可能性が高いと考えられている。

 1990年代のエルニーニョに伴う蚊の異常発生も病気の蔓延を招いたと考えられ、前年開催された「国連の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」でも、地球温暖化がもたらす伝染病の拡大への脅威が指摘されている。(c)AFP