【1月3日 AFP】大統領選の結果をめぐり国内に暴動が広がるケニアに対し、国際社会は2日、危機的状況の打開に向け外交努力を加速させた。選挙後の暴動は部族間抗争に発展する様相を見せつつあり、これまでに数百人が殺害されたほか、数万人が国内外への避難を余儀なくされている。

 デービッド・ミリバンド(David Miliband)英外相とコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)米国務長官は同日、英ロンドン(London)でケニア政府に問題解決を迫る共同声明を発表。両者は声明で「われわれはすべての政治指導者に対し、まず何よりもケニアの民主主義に重きを置き、妥協の精神を持つよう呼び掛ける」と訴えた。

 ゴードン・ブラウン(Gordon Brown)英首相は前日、ガーナのジョン・アジェクム・クフォー(John Agyekum Kufuor)大統領とシエラレオネのアフマド・テジャン・カバー(Ahmad Tejan Kabbah)前大統領に連絡し、アフリカ連合(AU)と英連邦(Commonwealth)の合同使節団がケニア国内の対立勢力間の和解を監視する可能性について協議した。

■内戦状態への移行を懸念

 ケニア大統領選では接戦の末、現職ムワイ・キバキ(Mwai Kibaki)大統領が勝利し、12月30日に宣誓したが、これに反発して全国に暴動が拡大。その多くは部族間の対立に基づき、敗れた野党候補ライラ・オディンガ(Raila Odinga)氏は、キバキ大統領に「選挙は盗まれた」と主張している。

 キバキ大統領は同国最大部族キクユ(Kikuyu)に属する一方、オディンガ氏は2番目に大きいルオ(Luo)の出身。選挙後の暴動は明らかに部族間の様相を呈し始め、報復攻撃や標的が絞られた放火などにより、さらなる部族間抗争へ発展する可能性が懸念されている。

「殺害を犯した者を逮捕するなどの措置が緊急に取られない限り、ケニア情勢は混迷を深め、想像を絶する規模の虐殺が起こったアフリカ諸国と同様の内戦状態になりかねない」と、2日付の日刊紙「デーリー・ネーション(Daily Nation)」は警鐘を鳴らした。

 国内の医療関係者、警察関係者、遺体安置所職員などの話からAFPが独自に集計した統計によると、選挙投票日から現時点までの死者は316人に上る。中でもオディンガ候補が広い支持を集めた西ケニア(Western Kenya)における暴動が最も激しい。

■殺害を恐れ隣国ウガンダへ

 隣国ウガンダ当局の報告によると、ケニアからキクユ族の住民数百人が、オディンガ候補に忠誠を誓う暴徒たちによる殺害を恐れ、国境を越え避難してきているという。

 紛争や武力衝突の多いアフリカの周辺地域の中で、ケニアは一般的に民主主義の旗手とみなされ、安定している国。今回の暴動のレベルは異常事態といえる。

 首都ナイロビ(Nairobi)中心部では1週間の混乱からようやく通常に近い状態を取り戻している。スーパーやガソリンスタンドには長蛇の列ができ、人々は仕事に戻り始めた。(c)AFP/Bogonko Bosire