【9月7日 AFP】全米の養蜂場から数十億匹のミツバチが短期間にこつぜんと消え去り、「蜂群崩壊症候群(ほうぐんほうかいしょうこうぐん、colony collapse disorder、CCD)」と名付けられた怪現象解明の重要な手がかりとなりそうな事実が6日、明らかになった。科学誌「サイエンス(Science)」の電子版が伝えた。

 それによれば、IAPV(イスラエル急性麻痺ウイルス)と呼ばれるウイルスが、オーストラリアから輸入されるミツバチの生体、あるいは中国から輸入されるロイヤル・ゼリーに混入して運び込まれたことが「蜂群崩壊症候群」の要因とみられるという。

 IAPVに感染したミツバチは羽が震える病気にかかり、通常は巣を出たところで全身が麻痺して死に至る。このウイルスが米国内で突然変異を起こしたか、あるいはその他の刺激因子と結合して、数十億匹のミツバチを死に至らしめた可能性があると研究者はみている。

 IAPVが「蜂群崩壊症候群」の直接の原因であるという証拠はまだ挙がっていないものの、養蜂場からこのウイルスが検出されれば96.1%の確率で「蜂群崩壊症候群」の発生を予測できるという。 

 しかしIAPVは健全な養蜂場からも検出されているため、症候群はウイルスだけでは発生せず、むしろ多数の要因が結合してミツバチが弱った際に発生すると専門家は考えている。

 その中でも有力な要因として挙げられているのは、バロアダニミツバチヘギイタダニ(Varroa Mite)と呼ばれるダニの一種の寄生虫で、これはミツバチの免疫システムを弱めることで知られている。IAPVの存在は確認されていても、寄生虫は確認されていないオーストラリアでは、「蜂群崩壊症候群」の大規模発生は確認されていない。

 もう一つの可能性としては、全米の干ばつでエサが手に入りにくくなったことがあると研究者は指摘する。

 昨冬、全米の養蜂場のうち、「蜂群崩壊症候群」の被害を受けたのは4分の1に上る。全体の45%の巣が被害を受けたという。中でも被害が大きかったのは、ミツバチを全国に運んで果物や野菜の受粉をおこなう商業ベースの大規模養蜂施設。

 安価な輸入ハチミツの影響で、全米ではすでに養蜂場の減少が進んでいる。そこに「蜂群崩壊症候群」が重なって、全米の総額146億ドル(約1兆7000億円)相当の作物の受粉に必要なミツバチが確保できなくなる心配が出ているという。(c)AFP/Mira Oberman