【カンヌ/フランス 21日 AFP】アイルランド出身のロックバンドU2のショートライブ、フランス人映画監督ロマン・ポランスキー(Roman Polanski)の怒り、大富豪の豪華ヨットの難破など、映画祭60周年を祝うカンヌは20日、驚きとドラマに彩られた。

■おめでとう、カンヌ!

 「(60回目の誕生日)おめでとう、カンヌ!」ボーカルのボノ(Bono)の一声で、大勢の映画ファンを前にレッドカーペットでの演奏が始まった。披露されたのは『Vertigo』と『Where the Streets Have No Name』。

 しかし、ライブの高揚感が終わる頃、世界25か国から集った監督35人による短編映画集『Chacun Son Cinema(英題:To Each His Own Cinema)』の上映会場では、会場を飛び出したポランスキー監督が注目を集めていた。

■ポランスキー監督が激怒
 
 コーエン兄弟(Coen brothers)、北野武(Takeshi Kitano)、ウォン・カーウァイ(王家衛、Wong Kar-wai)ら、31人の名監督が座るステージを突然出て行ったポランスキー監督。

 「こんなに重要な監督たちが一同に集い 記者会見に臨むというのは、非常に珍しく貴重な機会だと思います。なのに、こんなくだらない質問を受けるとは、恥ずかしいことです」ポランスキー監督は、会場にそろった監督たちの中に女性が少ないのはなぜか、という記者の質問に対して怒りを表した。

 「あなたたちはもはや、映画がどうかなどに興味はないのです。文章を書く必要もない。入手した情報をコンピューターで送るだけ」こうポランスキー監督は述べると、「皆で昼食に行くのをお勧めします」と立ち上がった。

■豪華客船は傷モノに・・・

 20日に行われた『Chacun Son Cinema』の上映会の前日、関係当局は港近くで座礁したサウジアラビアの大富豪Nasser Al-Rashidさんが所有するヨットを片付けるため、海岸の清掃に手間取っていた。ヨットはボートでけん引され、急きょ補修されたが、高価な船体には2か所の傷が残った。

 これらの事件は、街に集まった15000本の作品と、イベント取材、無数の映画鑑賞、大量の作品売買に追われるカンヌを取材中のマスコミを賑わせた。コンペ部門に出品された22作品の中からパルム・ドール(Palme d’Or)受賞作が決まる27日まで、このわくわくした感じが続くのだ。

■個性様々な作品と関係者たち

 受賞候補作品には、非合法の中絶を扱った、ルーマニア人クリスチャン・ムンギウ(Christian Mungiu)監督の『4 Luni, 3 Saptamini si 2 Zile』、皮肉たっぷりにアメリカ開拓時代の西部を描いた、コーエン兄弟の『No Country for Old Men』などが名を連ねている。

 歌手ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)のデビュー作でカーウァイ監督がメガホンを取った、映画祭オープニング作品『My Blueberry Nights』も好評だった。

 これから、ガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)、クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)、エミール・クストリッツァ(Emir Kusturica)、アレクサンドル・ソクーロフ(Alexander Sokurov)、イ・チャンドン (Lee Chang-Dong)らの作品上映が待たれる。

 同映画祭で通例となっているように、正式招待作品には政治的な作品に対する特権的な発表の場が用意されている。

 パルム・ドール受賞監督、マイケル・ムーア(Michael Moore)は、米国の医療制度を厳しく批判した最新作『シッコ(Sicko)』で再び、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領を痛烈に非難している。
 「法律、憲法を振りかざした政権だ」と語ったムーア監督は、撮影のためキューバに入国したことに対する米国政府の調査を攻撃した。

■話題が尽きないカンヌ

 レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)は地球環境保護をテーマにした『The 11th Hour』の記者会見で、飛行機で各地を飛び回る生活でも、環境保護に取り組んでいることを受け身の姿勢で語った。

 映画祭会場まで燃料を多量に消費する飛行機で来たのでは、との質問を受け、「わたしは列車で大西洋を横断してきましたよ」と皮肉を返したりもした。
 そして、「私たちはできるだけのことをしようとしているんだ」と加えた。

 今後カンヌへ登場するスターの中には、ブラッド・ピット(Brad Pitt)、アンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)夫妻、ジョージ・クルーニー(George Clooney)、マット・デイモン(Matt Damon)、アル・パチーノ(Al Pacino)、ジェイク・ギレンホール(Jake Gyllenhaal)、ロバート・ダウニー・Jr(Robert Downey Jr.)、シルベスター・スタローン(Sylvester Stallone)、シャロン・ストーン(Sharon Stone)、ジェーン・フォンダ(Jane Fonda)、マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)ら、そうそうたる顔ぶれがそろっている。

 写真は、激怒して会場を立ち去るポランスキー監督。(c)AFP/Fred Dufour