■報道の視聴による人への影響

 論文の共著者であるカリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)のロキサーヌ・コーエン・シルバー(Roxane Cohen Silver)教授(心理学)によると、大手報道各社は、残虐なイメージの多くを削除したり修正したりしているが、目撃者が撮影した未修正の写真や未編集の動画は、ツイッター(Twitter)やフェイスブック(Facebook)などのソーシャルメディア上で広範囲に出回ったという。

 シルバー教授はAFPに対し、「印象的だったのは、事件に巻き込まれた知人が1人もおらず、事件現場にも居合わせなかった人にとっての報道視聴からの影響の度合い」と述べた。

「報道の視聴は、そこに居合わせたことよりも、急性ストレス反応のより強固な予測因子となった」(シルバー教授)

 急性ストレス反応は、侵入的想起や反芻(すう)、フラッシュバック、緊張、過度の警戒心、事件を思い出させるものを避けようとするなどの一連の症状として定義されている。

 調査は、事件後の2~4週間のあいだに実施され、事件後の1週間にメディアを視聴した時間数と心理的ストレス症状について対象者に尋ねた。

 米科学アカデミー紀要に掲載された報告書によると、現場に居合わせた人たちや事件に巻き込まれた知人がいる人たちは、現場に居合わせなかった人たちよりも急性ストレスの兆候を経験する可能性が高く、攻撃に関する報道をより多く視聴する可能性も高かった。

 しかし、シルバー教授によると、心理的ストレスのより強い指標となるのは、爆発事件に関連する報道を1日に6時間以上見たり読んだりするかどうかだという。「直接見ることは重要ではないという意味ではない。現場に居合わせたということ以上に、報道の視聴は急性ストレス反応のより強固な予測因子となるということだ」

 報告書によると、攻撃についての報道を1日に6時間以上視聴した人たちは、1日に1時間視聴した人たちに比べて、急性ストレスを報告する可能性が9倍だったという。

 シルバー教授によると、調査対象者の平均メディア視聴時間は1日に4.7時間で、ソーシャルメディアの閲覧、爆発事件の動画視聴、新しい記事を読む、テレビの報道を見るなどが一般的だった。