【東京 5日 AFP】10年前、東京の地下鉄でサリンガスを撒き、多大な被害をもたらしたオウム真理教(現在アーレフに改称)。5日、同団体の上祐史浩(Fumihiro Joyu)代表が脱退を決意したと報じられた。

 名門大学の理工学部で学生時代を過ごしていた上祐氏(44)は、公安調査庁から同教団内でも穏健派と見られていた。時事通信(Jiji)を初め、その他メディアは、同代表らが5日教団の監視を担当する公安調査庁(東京・霞ヶ関)へ赴き、今月にも教団を脱退することを明らかにしたと伝えた。

 同氏は260人の信者を率い、新団体を設立する予定だ。共同通信(Kyodo)によると、上祐代表の後任には野田成人幹部が内定しているという。

 オウム真理教(現在アーレフに改称)は松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚によって設立された教団で、針療法士であった同氏が啓示を行い信者を率いていた。

 松本死刑囚は、1995年3月20日に起こった地下鉄サリン事件の首謀者として死刑を宣告された。同事件では12人が死亡、数千人が重軽傷を負い、日本社会に大きな衝撃を与えた。

 上祐代表は麻原彰晃とは異なる見解を持つとして、距離を保つ姿勢を見せてきたものの、公安調査庁は同代表らを警戒をしてきた。さらに同教団は今なお危険をはらんだ存在として当局の特別監視下に置かれている。

 公安調査庁関係者は「上祐氏が設立する新団体にも十分な警戒を払っていく必要があります」と述べた。当局及び同教団は現在のところ、コメントを控えている。

写真は、2003年4月10日にロシア・モスクワを訪問した際の上祐氏。(c)AFP/ALEXANDER NEMENOV