<菅付雅信:新連載「ライフスタイル・フォー・セール」>第十三回:中国のライフスタイル格差を捉える写真家が見つめる消費欲の行方
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■社会発展の過渡期としての「物欲」
急激な情報化と消費主義の台頭。ホァンさんは中国の未来について希望も不安も交えて語る。
「今の中国の格差状況について不満があるように見えて、実は人々のあいだではこれから経済が良くなるという考えが広がっているんですよ」
事実、現在の都市−農村間の格差についても変化が見られる。所得格差自体の厳しい状況は変わらないものの、2010年から格差が徐々に縮小傾向にあり、近年では農村部の所得が都市部よりも速いペースで上昇するようになっている。(参考:http://www.jri.co.jp/page.jsp?id=24969)。
では、経済格差が狭まり人々の生活水準がさらに向上したとき、中国の人々はどういうライフスタイルを選択するのだろうか?
「経済が豊かになったところで人々がシンプル志向の脱・消費主義に目覚めるかと言えば、必ずしも皆がそうではないと思うんです。しかし、私が創作活動を通して様々な市井の人々の日常空間を見ていくなかで、確かに脱・消費の生活を実践している人はいます。もちろん過剰な消費を止めようと思い直す人々はこれから増えていくと思います。でも果てしない物欲は人間が自らを律することの弱さを象徴していて、簡単に止めようがないんです。私は今の中国の大量消費行動はある種の過渡期で、社会を発展させるためには必要な現象だと考えています。経済発展の過程として、物質的な消費が奨励される。ただ、ある水準まで達すれば、人々は次に心理的充足を求めるようになるのではないでしょうか。消費熱の後の心理的充足を満たすもの、それが現在の中国におけるカウンター・カルチャーになるのだと思います」(次回につづく) 【菅付雅信】
■プロフィール
1964年宮崎県生まれ。法政大学経済学部中退。「コンポジット」、「インビテーション」、「エココロ」などを創刊し編集長を務める。現在は雑誌、書籍、ウェブ、広告などの編集を手がける。著書に「東京の編集」「はじめての編集」「中身化する社会」等がある。
■「ライフスタイル・フォー・セールス」過去記事一覧
http://www.afpbb.com/articles/modepress/3007611
■関連情報
・黄慶軍 公式HP:www.huangqingjun.com
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