■中国ではロハス層は数パーセントでも巨大な市場になる

 リチャードのように中国におけるポスト消費の考えにやや悲観的な考えもある一方、中国におけるライフスタイルの向上に期待する声もある。ジェーンが以前編集を務めていた雑誌『LOHAS』の現・編集長であるスー・デーもそのうちの一人だ。『LOHAS』は今や実売50万部、アプリは約280万ダウンロードを誇る。間違いなく世界一部数の多いエコ雑誌のはずだ。また、近年ではイーコマースや実店舗において、雑誌で取り扱った製品やロハスに関連した製品の販売をはじめた。『LOHAS』の読者の特徴について、彼女は次のように語る。

 「彼らは大都市に住みながらDIYや健康食品、そして自分たちで食べるものの栽培などに興味がある。完全なオーガニックではないけれど、健康的で減農薬の野菜にこだわる人がすごく多い。ご存知のように、いくつかの中国食品には実際に危険なものが含まれていて、人々は少しずつ危機感を持ちはじめているわ。だから『LOHAS』では有機栽培農場や、日本のように栽培者の顔が分かるようなシステムを紹介して、よりオーガニックな食品に対して読者が敏感になるよう呼びかけているの」

 また、物価は上昇したものの、オーガニック食品の値段にはほぼ変化がないことを指摘し、実際のところ有機食品はそこまで高くないことを強調する。

 「人々はラグジュアリーなアイテムを欲しているけれど、それに比べればロハスなアイテムは安いものだと思うの。それに、もし高いと感じたとしても、製品の良さに気付けば正当な価格だと思うでしょう。経済発展が以前に比べて緩やかになった今だからこそ、一部の人々は本当に必要とするものは何かについて考え直せるようになった。実際、ここ数年でロハスに目覚める人は急速に増えている。幸せを手にするためのお金稼ぎよりも“幸せとは何か”、例えば仕事や家族、食生活など、見えないものの価値の方が重要になると思うの」

 では中国市場において、ロハスは将来どのような展開を見せるのだろうか。

 「メインストリームな文化にはならないと思うし、私たちもひたすら市場拡大していきたいというハングリー精神はないわ。でも、中国市場はとてつもなく大きいから自然と巨大なマーケットにはなっていくでしょう。主流派にならなくても、世界で最も大きなロハス・マーケットが出来る可能性があります」

 生産者と信頼できる関係性をつくり、小額投資ではじめられるイーコマースで商品売買し、インターネットや雑誌を通じて新たなポスト消費の思想を届ける。それはまさにアメリカの西海岸やブルックリンで行われているニュービジネスと共通する価値観がある。