■中国が欧米ブランドを支えている現実

 リチャード・ヒューは、元ワイデン&ケネディ(Wieden+Kennedy)上海の代表で、現在はコンサルティング会社代表を務めるエリート中国人だ。上海市や台湾政府などのコンサルティング、TEDのアジアイベントの総責任者、さらに上海の大学でコミュニケーション、クリエイションを教えるなど、アカデミックの領域にまで活動を広げる上海のキイ・パーソン。彼は中国で萌芽しているロハス志向に対してまだまだ少数派であると主張する。

 「中国の主流の価値観は、高級ブランド品を買い求め、大型家電が一杯ある大きな家に住みたいという、ラグジュアリー志向がまだまだ強いと思う。マジョリティの人々はラグジュアリー志向に対してなんら疑問を感じていない。新しいショッピングセンターができれば、人が押し寄せる。ただ、それが新しく大きな店というだけでね。中国政府はロハス志向に対して、“まだまだ経済をスピードアップさせたいのに、どうしてスローダウンしないといけないんだ”と思っているんだ。今、欧米や日本で起きている低消費主義を今の中国の人々に教えるのは難しいと思う。僕自身はラグジュアリー志向と戦うつもりはない。ラグジュアリー志向は経済の重要な機能であると思うし、事実、今や中国が欧米のラグジュアリー・ブランドを支えているんだよ」

 一方で中国の上流階級や知識層は大量生産・大量消費の経済に対して疲れを感じてきていることも事実であるとリチャードは語る。

「僕が大学で教えている学生も一部はロハス志向だよ。彼らは無印良品などのシンプルなものを好んで買い、スローフード、スローライフを好む。僕はこれらを“中国のニュー・クール”と呼んでいる。これらがもっと広がりを見せれば、中国の経済も大きく変わるだろうね」