【2月19日 AFP】サッカー、中国スーパーリーグ(1部)の上海申花(Shanghai Shenhua)は、1月にクラブに加入したニコラ・アネルカ(Nicolas Anelka)が中国サッカーの起爆剤となることを期待している。

 アネルカの最初の課題は、外国人選手が腰を落ち着けるのに四苦八苦する中国という国に慣れることだ。

■一日で退団した外国人選手も

 2011年12月までイングランド・プレミアリーグ、チェルシー(Chelsea)に所属していたアネルカは、ポール・ガスコイン(Paul Gascoigne)氏ら、中国にやってきた多数の外国人選手の中でも、同リーグで最も注目される契約を交わした。

 しかし、スーパーリーグで数シーズン以上プレーを続けた選手はほとんどおらず、1シーズンもたなかった選手もいる。ニュージーランド代表のシェイン・スメルツ(Shane Smeltz)は、山東魯能(Shandong Luneng)に移籍したものの、たった1日でクラブを去った。

 アネルカは16日に行われた記者会見で、「他にもオファーはあったが、中国とアジアのメンタリティーが好きだから中国を選んだ。中国のサッカーはとても新鮮だ。中国サッカーについては、実際にチームでプレーしたことがないから、評価は保留している。自分が他の選手にポジティブな影響が与えられればと思う」と語った。

 アネルカは、週給23万4000ユーロ(約2400万円)と報じられており、3月に開幕を迎える中国スーパーリーグに適応するには長くはかからないとされている。

■ピッチの外で待ち受ける困難

 英国サッカー界のはみ出し者であるアネルカが、どのようにして中国の経済都市・上海(Shanghai)での新しい生活に適応できるかを判断するのは時期尚早というものだ。

 米不動産コンサルティング会社、CBリチャード・エリス(CB Richard Ellis)上海法人のディレクターWing Chan氏は、アネルカはピッチの外でこそ最大の困難に直面するだろうという。

 外国のエグゼクティブやその家族の上海移住を手がけるChan氏は、アネルカが妻子を連れて上海に来るかどうかで状況が大きく変わると指摘している。

 「上海は現代的な都市に見えますが、実情は違います。メイドが同じ布を使って床を拭き、皿を拭くなどはほんの一例に過ぎず、他にもイライラさせることがたくさんあります」

 最初の数日間、アネルカは上海申花の手厚い保護を受けている。クラブは、かつての外国人選手のように空港でもみくちゃにされる事態を防ぐため、アネルカの到着予定日すら明らかにしなかった。

 現在アネルカは上海の最高級五ツ星ホテルの1つであるペニンシュラ・ホテル(Peninsula Hotel)に滞在している。クラブは、アネルカはその後高級プライベートビラに引っ越すとしているが、その場所は明らかにしていない。

■有名選手の実例

 単身でやってくる選手にとって、中国は厳しいところだ。元イングランド代表のガスコイン氏は2002年に単身で中国に乗り込んだものの、環境汚染で悪名高い地方都市、中国北部・甘粛(Gansu)省の蘭州(Lanzhou)で数ヶ月居住するに終わった。

 ガスコイン氏は自伝の中で、8時間の時差が原因で、英国に住む友人と話すことが困難だったと振り返っている。

 中国語を話すことができないガスコイン氏は、中国での生活が非常に退屈で落ち着かなくなり、ビスケットをエサに鯉を釣ろうとしたこともあるという。

■冷静な反応をみせるサポーターも

 元ドイツ代表でスコットランド・プレミアリーグのグラスゴー・レンジャーズ(Glasgow Rangers)でのプレー経験もあるヨルグ・アルベルツ(Jorg Albertz)氏は、英国放送協会(BBC)に対し、上海申花で2シーズンを楽しく過ごしたと語ったが、中国サッカーの八百長スキャンダルとプレー時期が重なったアルベルツ氏は、自身がプレーした数試合が賭け対象の八百長試合だったのではと疑いをかけていることを明かしている。

 とはいえ、上海申花のサポーター集団「ブルー・デビルズ(Blue Devils)」の多くのメンバーは、同クラブを2003年のタイトル制覇に導いたアルベルツ氏の名前が記されたユニフォームをいまだ着用している。

 アネルカは、スペインやイタリアの「ウルトラ」をモデルとするブルー・デビルズの熱狂的な歓迎が期待できるが、全てのサポーターが無条件にアネルカを受け入れる準備はできているという訳ではない。

 上海申花のサポーターの一人、27歳のBen Liさんはこう語っている。「アネルカが2年契約をまっとうできるか心配だ。傲慢で短気というのは周知だし、キャリアを中国で続けることを選んだ理由がわからない。もしチームメイトがアネルカと協力できず、アネルカを十分にサポートできなければ、彼は苛立ってチームを離れたくなるだろう」

(c)AFP/Cameron Wilson