【3月4日 AFP】コロンビア空軍が隣国エクアドル領内に潜伏するコロンビアの左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(Revolutionary Armed Forces of ColombiaFARC)」の拠点に越境攻撃を行い、同組織ナンバー2の司令官を殺害したことから、両国と、コロンビアの行為を非難するベネズエラも含め、南米北部地域では不穏な空気が漂っている。戦争へ発展する可能性も取りざたされている。

■エクアドル政府、コロンビアと国交断絶

 コロンビア政府は3日、エクアドル、ベネズエラ両政府がFARCと共謀してきたとして非難。コロンビア外務省は、エクアドル政府はこれを否定し、外交関係を断絶したと発表した。

 コロンビア政府によると、同国軍が1日に空爆および地上作戦で越境攻撃したエクアドル国内のFARC拠点で、殺害したFARCナンバー2のラウル・レジェス(Raul Reyes)司令官のパソコンに保存されていた文書や写真から、レジェス司令官とグスタボ・ラレア(Gustavo Larrea)エクアドル内相の接触が明らかとなったという。

 フアン・マヌエル・サントス(Juan Manuel Santos)コロンビア国防相は、「このことは、エクアドル政府がゲリラ組織を黙認し、またある意味で共謀していたことを意味する」と指摘した。

 コロンビア政府はまた、パソコンのデータを証拠として国連(UN)および米州機構(Organization of American StatesOAS)に提出する予定だという。

 OASは4日、この問題について緊急の協議会を開く予定となっており、国連の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-Moon)事務総長は声明で、両者間の緊張と論争の高まりについて懸念を表明した。

■FARC、ウラン50キロを入手か?

 コロンビア警察当局によれば、コンピュータのデータから、FARCがウラン50キロを入手していたことが明らかになり、さらにチャベス大統領からFARCへの計3億ドル(約310億円)の送金記録からベネズエラ政府の関与も明らかになったが、特に懸念されるのは保有するウランについてだという。

 同警察当局はまた、越境攻撃に米国が提供した情報が一部使われたことも明らかにした。コロンビアのFARCとの戦いを支援する米国は、「テロリスト」のゲリラ集団に対する攻撃を支持する一方、隣国との緊張緩和を外交努力で行うよう求めた。

■ベネズエラ、エクアドル両政府はFARCとの関係を否定

 一方、ベネズエラ、エクアドル両政府はそれぞれ、コロンビアとの国境付近に軍を配備している。両政府はコロンビアのさらなる越境攻撃に備えた防衛目的としているが、両者間の戦争への発展も懸念されている。

 両国はまた、FARCとの関係も強く否定している。FARCは、誘拐や麻薬密売人の保護を行っていることから、コロンビア、米国、欧州連合(EU)によってテロ組織に指定されている。

 エクアドル政府は、コロンビア軍による越境行為は「究極の結末」をもたらしかねないとの警告を伝えた。

 駐ベネズエラ・エクアドル大使がAFPに明らかにしたところによると、ラファエル・コレア(Rafael Correa)大統領はブラジル訪問後の5日、ベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領を訪問する予定だという。南米の大国ブラジルが、強い外交力で、現在緊張緩和に努めている。

 好戦的な声明が発表される一方で、3日夜の時点では、戦闘が開始される兆候は見られていない。(c)AFP/Henry Orrego