【ワシントンD.C./米国 31日 AFP】米国務省のショーン・マコーマック(Sean McCormack)報道官は、29日の記者会見で、久間章生防衛相の米政府批判と受け取れる発言について、日本側が「大臣の個人的な見解」と説明したと述べた。また、在日米軍の普天間飛行場の移設問題に関する合意は、「実に困難な交渉の末に見つけたよい妥協点だ。適切な合意だと認識しているし、交渉の結論を遂行する用意もある。日本政府も同じ見解であることを期待する」と語った。

 久間防衛相は前週24日、イラク戦争に踏み切った米国の判断は「間違いだった」と述べたほか、27日には普天間飛行場移設問題について、「米国にあまり偉そうなことを言ってくれるなと伝えた」などと発言し、米側の対応を批判。政府や自民党幹部が、日米の信頼関係を損ないかねないとの懸念を表明していた。

■ 日米同盟はアジア政策の要

 国務省は当初、久間防衛相の発言に不快感を表明し、日米安全保障協議委員会(2プラス2)の日程設定が困難になりかねないと指摘したが、その後批判を和らげている。委員会の開催中止の可能性を問われたマコーマック報道官は、「それはない」と答えた。

 一方、ジョン・ネグロポンテ(John Negroponte)米次期国務副長官は30日、上院公聴会で日米関係について、「常にわが国の東アジア政策の要」だとして、「日米同盟を当然のことと思うべきではなく、関係を育んでいかねばならない。日本はこれからも米国の最大の同盟国の1つだ」との見解を示した。

■ 米国批判は参院選狙いから

 久間防衛相は今月9日、防衛庁の「省」昇格に伴い、戦後初の国防担当大臣に就任した。一連の米国批判については、7月末で期限が切れる自衛隊のイラク派遣延長を視野に、参院選で平和主義を掲げる公明党の票を確保する狙いだなどと弁明していると関係者筋は語る。

 イラク南部サマワで復興支援活動を行ってきた陸上自衛隊は、2007年7月に撤退し、現在は航空自衛隊のみが補給物資などの輸送活動を行っている。

 これに対し、2005年12月までホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長を務めたマイケル・グリーン(Michael Green)米戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長は、「イラク戦争をめぐっては、オーストラリアや英国と同様、日本国民の間に不満が渦巻いている。久間防衛相は、こうした国民感情を口にした初の閣僚だ」と解説。そのうえで、「(参院選対策との)弁明はやや空々しく、また明らかに防衛省内や内閣府、外務省などの考えとは異なっている」として、「一連の発言によって、日米関係の亀裂が深まったり緊張化したと見ることはできない」との考えを示した。

 写真は29日、衆院本会議中に言葉を交わす安倍首相と久間防衛相。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO