【12月6日 東方新報】中国工業情報化部直属のシンクタンク・中国情報通信技術研究院によると、中国で9月の携帯電話の出荷台数は前年同月比2.4%減の2092万2000台にとどまった。このうち5Gスマートフォンは0.1%減の1510万4000台だった。

 このマイナス幅はまだ「マシ」な方で、今年1~9月の出荷台数は1億9600万台で、前年同期比で21.1%も減少した。このうち5Gは1億5300万台で、前年比16.4%減。全体の7割以上を占める5Gスマホも、売り上げを押し上げる力が弱いのが実情だ。11月11日を中心とした中国最大のオンラインセール「ダブルイレブン」でも、スマホの販売台数は前年比35%減の900万台にとどまった。

 中国のスマホ市場は現在、華為技術(ファーウェイ、Huawei)、栄耀(HONOR)、小米科技(シャオミ、Xiaomi)、オッポ(OPPO)、Vivoなど国内メーカーが販売台数の8割以上を占めている。スマホの売り上げ低迷は中国経済にもマイナス要因となる。

 市場調査会社CINNO Researchのコンサルタント劉雨実(Liu Yushi)氏は「コロナ禍とインフレの影響は大きく、消費が増える年末シーズンに入っても携帯の売れ行きは伸び悩み、この傾向は来年初めまで続くだろう」と分析する。

 そもそも中国のユーザーの間では、「すぐ買い替えたいと思うほどの技術革新がスマホにない」という声が上がっている。データの移行やアプリの再ログインが面倒で、「バッテリー寿命が伸びた」「急速充電」程度では買い替え意欲を刺激しないという。また、携帯各社が高価格帯の新機種に力を入れて販売していることも、庶民が手を出しにくい要因となっている。

 そんな中、主に高価格帯のスマホを手がける栄耀は9月、価格を1499元(約2万9374円)に抑えた「Honor X40」128GBモデルを発売。スクリーン画面が折りたためるタイプとしては破格の安さだ。OPPOも11月下旬、折りたたみ式の「A1 Pro」128GBモデルを1799元(約3万5252円)で発売した。高価格帯の切り札的商品である最新型の折りたたみ式スマホを、「千元機」と呼ばれる1000元(約1万9595円)台の低価格帯に投入した。

 中国メディアはこうした状況を「スマホ市場で『内巻』が始まった」と報じている。「内巻」とは2020年から広まった流行語で、限られたポストや市場を死にものぐるいで奪い合う「消耗戦」のような状態を指す。コロナ禍とインフレが収束する見通しが立たないのと同様、中国スマホ業界の苦境は今後も続くようだ。(c)東方新報/AFPBB News