【4月27日 CNS】北京市人的資源・社会保障局は「労働時間と休暇のさらなる権利保護に関する通知」を発表。市内の主要企業で最近の2か月間、長時間残業が行われていないか調査と是正措置を始め、「996勤務」と呼ばれる長時間労働にメスを入れている。

 996勤務とは「朝9時に出勤して夜9時まで働き、週6日間勤務する」という意味で、過酷な労働実態を象徴した表現だ。2019年3月、IT業界のプログラマーたちがインターネット上で「996.ICU」というプロジェクトを立ち上げ、996勤務が常態化しており、ICU(集中治療室)に送られかねないように過酷だと訴えた。IT大手、阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)創業者の馬雲(ジャック・マー、Jack Ma)氏は996勤務を肯定する発言をして世間から批判を浴びた。

 ただ、現在の「残業文化」はIT企業に限らない。ある調査によると、中国の勤労者の9割近くが残業をしており、そのうち45.5%は週2〜3日残業し、24.7%がほぼ毎日残業している。「996勤務」よりひどい長時間労働の職場もあり、「午前0時から次の午前0時まで、週7日働く」という「007勤務」という言葉もある。寝る間もなく24時間働かされるような過酷労働のたとえだ。

 中国の労働法は1日の労働時間を8時間と定め、1週間の労働時間が44時間を超えてはならないとしている。最高人民法院と人的資源・社会保障省は昨年8月、「996勤務のような長時間労働は違法」と明確に断じている。

 北京市が残業実態を調査すると表明して以降、山東省(Shandong)や安徽省(Anhui)、河南省(Henan)、広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous region)、青海省(Qinghai)、湖南省(Hunan)、湖北省(Hubei)、江西省(Jiangxi)なども同様に、最近2か月間の残業調査と是正措置を始めている。

 ジャック・マー氏の発言は批判を浴びた一方、IT大手、聯想(レノボ、Lenovo)の楊元慶(Yang Yuanqing)会長は「996勤務に反対している」と表明している。残業廃止を表明している家電大手、格力電器(Gree Electric)の董明珠(Dong Mingzhu)会長は今年の全国人民代表大会(国会に相当)で「従業員の心身の健康を害する996勤務は絶対に認められない」と強調。検察が問題のある企業を監督し、残業に苦しむ労働者のために公益訴訟をすることを提案している。

 こうした流れを受け、一部のIT企業は996勤務と「大小週勤務(週6日勤務と週5日を隔週で繰り返す)」を行わないと発表している。一方で「大小週勤務がなくなると収入も減るため、転職を余儀なくされる」と悩む若者もいるという。(c)CNS/JCM/AFPBB News