【三里河中国経済観察】中国に新たな「大河」 平陸運河が正式開通

10月12日 16:00


広西チワン族自治区を流れる平陸運河=提供写真(c)CNS


【10月12日 CNS】中国に、新たな「大河」が加わった。

9月16日、中華人民共和国成立後、初めて国が統一的に計画・建設した河川と海を結ぶ運河「平陸運河」が正式に開通した。孫文が『建国方略』で構想を示してから1世紀余り。その構想がついに現実となり、広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)に新たな水運ルートが誕生した。

水路が開けば、地域の物流構造も変わる。これまで中国南西部の内陸地域は、河川がありながら海へ直接出にくいという地理的な制約を長く抱えてきた。豊富な資源と一定の産業基盤を持ちながら、その経済的な潜在力を十分に発揮することが難しかった。特に1600キロを超える海岸線を持つ広西チワン族自治区でも、海洋産業の域内総生産に占める割合は10%に満たない。

北部湾は中国南西部から最も近い海への出口だが、河川と海を直接結ぶ南北方向の水路がなかったため、貨物を海上輸送するには数百キロメートル遠回りし、粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)方面を経由する必要があった。

こうした状況を変えるのが、4年をかけて建設された全長134.2キロの平陸運河だ。北は西江水系、南は北部湾とつながり、珠江・西江水系に新たな海への航路を開いた。これにより中国南西部では、従来の東方向のルートに加え、南へ向かって北部湾に直接つながる水運ルートが加わった。

平陸運河は中国の内陸水路で最高ランクとなる「1級航路」の基準で建設され、5000トン級の船舶が航行できる。河川と海を結ぶ運河としては、中国国内だけでなく世界でも最高水準の航行規格を持つとされる。

中国当局が公表したデータによると、運河の開通により、中国南西部から海へ貨物を運ぶ際の内陸水路の航行距離は従来より560キロ以上短縮され、総合物流コストは18~30%削減される見通しだ。社会全体で年間50億元(約1175億150万円)を超える輸送費の節約につながるとしている。

これは、中国南西部の海への物流ルートが、従来の東方向に加えて南方向にも広がることを意味する。平陸運河の開通によって、中国西部と海外を結ぶ物流網「西部陸海新通道」で不足していた水運ルートが整備され、鉄道網との接続も進んでいる。

成都や重慶、湖南省懐化などではすでに、鉄道と水運を組み合わせた貨物輸送が始まっており、中国中西部の内陸地域から東南アジア諸国連合(ASEAN)へつながる新たな物流ルートが形成されている。

黄桶―百色鉄道(黄百鉄道)は2028年の開通が予定されている。完成すれば、貴州省などの貨物も鉄道と平陸運河を組み合わせて海へ運ぶことが可能となり、新たな物流の大動脈となることが期待されている。

平陸運河の意味は、地域の物流改善だけにとどまらない。中国の巨大経済圏構想「一帯一路(Belt and Road)」と西部陸海新通道を結ぶ重要インフラとして、平陸運河は物流ルートであると同時に、中国国内と海外の経済活動をつなぐ役割も担う。

国内では南西部の内陸地域に新たな水運ルートを提供し、国外に向けては中国とASEANを水路で結び、貿易や経済協力を支えることが期待されている。海外メディアも注目している。ベトナムの「ダナン新聞」は、平陸運河が地域の貿易ネットワークに新たなルートを加え、国境を越えた商品流通や投資、協力を通じて中国とASEANの結び付きを強めるとの見方を示した。

シンガポールの「ストレーツ・タイムズ(The Straits Times)」も、東南アジアと中国の貿易が拡大する中で平陸運河が開通することにより、双方の貿易をさらに後押しすると報じている。

中国では古くから、秦代に嶺南地域への水路を開いた霊渠をはじめ、隋・唐代の大運河、元・明・清代に整備された京杭大運河など、大規模な運河が交通や物流を支え、経済や文化の交流に重要な役割を果たしてきた。

平陸運河の開通により、広西チワン族自治区では今後、内陸部から海へとつながる新たな産業・物流ルートの形成が加速するとみられる。この新たな「大河」が変えるのは、貨物の流れだけではない。中国経済と海外を結ぶ物流・経済ネットワークにも、新たな広がりをもたらすことになる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News