【10月26日 People’s Daily】地球から観測すると、我々が見る月の表側には、広大な海(月海)と数多くのクレーターがある。
一方、月の裏側は、潮汐力によって月の自転と公転が同期しているため、常に地球に背を向けており、神秘のベールに包まれている。今、その月の裏側の神秘が少しずつ解明されつつある。
昨年6月、「嫦娥6号(Chang'e-6)」は人類初となる月の裏側のサンプルを地球に持ち帰った。このほど、中国科学院地質・地球物理研究所、中国科学院国家天文台、南京大学などの研究チームは、嫦娥6号が持ち帰ったサンプルを用いて、4つの最新研究成果を挙げた。これには複数の「世界初」となる重要な進展が含まれており、国際学術誌「ネイチャー(Nature)」の表紙記事として掲載された。
月の表側と裏側は大きく異なる。表側は比較的平坦で広大な玄武岩平原が広がっているのに対し、裏側は高地が多く、海(月海)は少なく、「月殻(月の地殻部)」も厚くなっている。なぜ月には「二つの異なる顔」があるのか?
中国科学院院士の呉福元(Wu Fuyuan)氏は「嫦娥6号が持ち帰ったサンプルは、月で最大かつ最古の衝突跡である南極エイトケン盆地で採取されたもので、月の表側と裏側の物質組成の違いを解明し、月の『二面性』の謎を解く貴重な機会を提供している」と紹介した。
嫦娥5号が月の表側から持ち帰ったサンプルと嫦娥6号の月の裏側のサンプルは、外見だけを見ても非常に大きな差があるという。呉氏はこれについて「5号のサンプルは色が濃い黒で、ほぼ純粋な玄武岩だ。一方、6号のサンプルは色が薄く、白みがかっている。これは、白色の斜長岩で構成される高地物質を大量に含んでいるためだ」と解説する。
また、嫦娥6号の「月壌(月の表土)」サンプルは、静電気効果で「活発に跳ねる」嫦娥5号の月の表側の「月壌」サンプルとは異なり、異常なほど「おとなしく」、明らかな静電現象は見られなかった。さらに、嫦娥5号のサンプルは乾いた砂のように崩れやすいのに対し、嫦娥6号のサンプルは高く積み上げることができ、垂直に近い急斜面を作っても崩れ落ちないほどだった。
研究者らは、この違いが粒子形状や鉱物間の吸着力に関連している可能性があると推測しているが、具体的な原因はまだ研究中だという。これは単に興味深い物理的な謎であるだけでなく、将来の月面基地建設、例えば月の土を用いた「月面レンガ」の製造方法などに直接関わる問題である。
月マントルは月殻と月核の間に位置し、月の表面からおよそ60キロメートルから1000キロの深さに存在する。月マントルの水分含有量は、月の起源、マグマ活動、資源環境への影響を解明する上で重要な意味を持っている。
中国科学院地質・地球物理研究所の胡森(Hu Sen)研究員は「学術界では一般的に、約45億年前に火星サイズの天体が原始地球に衝突し、飛散した物質が再び集積して月が形成されたと考えられている。この衝突過程で極度の高温が発生したため、月は理論的には極度に水が乏しいはずだ」と解説する。
しかし、過去20年間、学術界では「月マントルが水に富むか貧しいか」について議論が続いてきたという。
今回、研究チームは嫦娥6号月サンプル中の玄武岩片を用いて、月マントル源域の水分含有量研究を実施した。
胡氏は「月の進化過程において、月マントル岩石の一部が融解してマグマを形成し、その一部が月の表面に運ばれて玄武岩を形成した。ゆえに、この玄武岩を使って、月マントルの謎を探ることができる」と説明する。
研究結果によると、嫦娥6号の玄武岩の月マントル源域は極度に水に乏しく、水含有量は岩片1グラム当たりわずか1マイクログラムから1.5マイクログラムで、これまでに報告されたデータの中で最低値であり、月の表側の月マントルよりも「乾燥」していることが分かった。
研究者らはこの理由を、エイトケン盆地で発生した「衝突事件」が月マントル源域の水を変化させた可能性があると推測している。
ネイチャーの査読者は「この研究は月の裏側のマントルの水分含有量を初めて測定したもので、高い独創性があり、この研究分野において極めて意義の大きな発見だ」と高く評価している。
さらに、研究チームは月の裏側のマグマ活動や月の古磁場(過去の地磁気)などについても一連の進展を遂げており、今後嫦娥6号のサンプルの研究が深まるにつれ、続々と新たな発見が得られるものと信じられている。
月の裏側からもたらされた貴重なサンプルは、月そして宇宙全体の進化のさらなる謎を解き明かす重要な手助けとなることだろう。(c)People’s Daily /AFPBB News