■「愚かな男ではない」

接戦が予想される総選挙では、50万人以上の若者が初めて投票することになる。調査によると、その圧倒的多数が中道右派または右派を自認している。

イスラエルのニュースサイト「Yネット」が公表した初投票者543人を対象とする世論調査では、約16%がベングビール氏の「ユダヤの力」か、ベツァレル・スモトリッチ財務相率いる極右政党「宗教シオニズム」を支持した。

9月にテルアビブ近郊の高校で行われた模擬選挙には、ベングビール氏を含む候補者たちが参加した。

この際、ユダヤの力の活動家らは、銃の形をしたキーホルダーを生徒たちに配布した。ベングビール氏が進めてきた銃所持許可制度の規制緩和を連想させるものだった。

ベングビール氏が共有した映像には、黒い服を着た数十人の男子生徒が歓声を上げ、ユダヤの力の党旗を振る姿が映っていた。

ヨルダン川西岸にある極右思想の支持者が多いことで知られるユダヤ人入植地キルヤトアルバに住むベングビール氏は、総選挙を前に、従来の支持基盤以外の地域でも選挙運動を展開している。

イスラエルで最も世俗的でリベラルとされるテルアビブで最近開かれた英語話者向けのイベントで、ベングビール氏は「ボスのように振る舞えば、尊敬される」と語った。

口笛や拍手で迎えられて登壇し、両手でハートの形を作ったベングビール氏は、ベドウィン(アラブ系遊牧民)の家々を取り壊したことや、パレスチナ人受刑者への食事を減らしたことを自慢した。

「(刑務所に)入ってくる時は太っているが、出ていく時は痩せている」と述べ、自身の体重についても冗談を飛ばしながら笑みを浮かべた。

ベングビール氏は最近、笑顔のパレスチナ人たちがベルトコンベヤーに乗ってイスラエルの刑務所に入り、泣きながら痩せ細った姿で出てくる人工知能(AI)生成動画を投稿したが、激しい批判を浴びて削除した。

10月には有罪判決を受けて服役しているイスラム組織ハマスの幹部、ハッサン・サラメ受刑者に対し、「殺してやりたい。死刑にしてやりたい」と脅迫する動画を投稿。イスラエルの中央選挙管理委員会は、選挙用プロパガンダに該当し、選挙法に違反したとしてベングビール氏に罰金の支払いを命じた。

最近公開された一連のAI生成動画には、ガザのがれきの中に座る高齢のパレスチナ人男性の前に、ベングビール氏の姿をした魔人が現れ、フランスのパリに移住したいという男性の願いをかなえるものもあった。

フランス政府はこの動画を非難し、ベングビール氏がフランスへの入国を禁止されていることを指摘した。

エルサレムのマハネイェフダ市場を訪れていた人々の目には、極右が期待の持てる選択肢として映っていたようだが、ベングビール氏の挑発的な言動を懸念する人もいた。

ラマトガン出身のシュロモさん(42)はベングビール氏について、「彼は激しすぎる」とした上で、彼のような人物は必要だが、イスラエルは世界の他の国々と協力していく必要があると指摘した。

シュロモさんは、前回の総選挙でネタニヤフ氏に投票したが、今回はスモトリッチ氏に投票するかもしれないという。

エルサレム在住のマイケルさん(37)も同意見だった。

「彼(ベングビール氏)は愚かな男ではないと思う。だが実際には、票を集めるために愚かなことを言っている」と語り、「それは非常に効果的だが、イスラエルの経済と外交に大損害を与えている」と付け加えた。(c)AFP