【10月23日 東方新報】中国で改正「婚姻登記条例」が施行されて以来、中国本土の住民は戸籍所在地に関係なく、全国どこの婚姻登記機関でも婚姻手続きができるようになった。これを受け、雪山や湖、歴史ある古い町並みなど、思い出に残る場所を訪れ、旅行先で婚姻届を提出する若者が増えている。中国各地では婚姻登記サービスと観光資源を組み合わせる取り組みが進み、新婚カップルに特別な思い出を提供するとともに、地域の観光消費を促す新たな機会にもなっている。

新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のサイリム湖では、早朝の湖面にまだ薄い霧が漂う中、観光エリアの新しいビジターセンター3階にある婚姻登記所が早くもにぎわいを見せていた。職員は通常より早く出勤し、椅子の配置や列の整理、来訪者の案内などに追われ、この日は347組のカップルが婚姻手続きを済ませた。

湖北省(Hubei)から訪れた唐章琪(Tang Zhangqi)さんは「数千キロ離れたサイリム湖まで来て、私たちにとって大切な瞬間を形に残したかった」と話す。恋人の熊新怡(Xiong Xinyi)さんとは交際2周年の記念日に婚姻届を提出することを決めた。「特別な儀式を通じて、二人だけの忘れられない大切な思い出を残したい」と語った。

サイリム湖は新疆ウイグル自治区ボルタラモンゴル自治州(Bortala Mongol Autonomous Prefecture)の南西部に位置し、新疆で最も標高が高く、面積が最大の高山冷水湖として知られる。「大西洋最後の一滴の涙」とも呼ばれるが、近年は湖にまつわる数字の語呂合わせも注目されている。

観光エリアの責任者によると、サイリム湖は新疆・ウルムチ市(Urumqi)から約520キロ、湖面の平均標高は約2073メートル、観光エリアの総面積は1314平方キロ。これらの数字を並べた「52020731314」は、中国語の語呂合わせで「愛している、深く愛している、一生涯ずっと」という意味に結び付けられている。中国では「520」が「我愛你(愛している)」「1314」が「一生一世(一生涯)」を連想させる数字として親しまれている。

サイリム湖婚姻登記センターの森徳西主任によると、同センターは2024年4月に正式に運営を開始した。全国からの婚姻登記を受け付けており、予約はすべてオンラインで行い、登記手続きや結婚証の交付は無料となっている。また、観光エリアでは、こうした数字の語呂合わせを生かした「1314」のモニュメントや愛をテーマにした景観スポットを整備し、湖の自然環境を婚姻登記の特別な魅力につなげている。

今年に入ってから、同センターで婚姻登記を行ったカップルは2万組を超え、そのうち80%が新疆ウイグル自治区外からの旅行者だった。

吉林省(Jilin)の長白山でも、雄大な自然を背景に婚姻届を提出するカップルが増えている。山々を吹き抜ける風に松林が揺れる長白山のふもとでは、婚姻登記所の窓から差し込む日差しが、花びらの装飾を柔らかく照らしていた。「私たちは自らの意思で夫婦となることを誓います」。白いウェディングドレスと黒いスーツに身を包んだカップルが、登記カウンターの前に並び、互いに誓いの言葉を交わす。職員が結婚証に印を押すと、二人は正式に夫婦となった。

地元では「長く寄り添い、白髪になるまで、山が二人の愛を見守る」という意味を込めた独自の結婚観光ブランドを展開している。松林や自然景観を生かした「恋語松鈴」「松見卿心」「松涛鵲橋」などの記念撮影スポットを設け、長白山の自然と愛のイメージを結び付けている。

近年、長白山で婚姻登記を行う他地域からのカップルは増加している。静かな松林に魅力を感じて訪れる人もいれば、山頂付近の火口湖「天池」の美しい景色に引かれる人、秋から冬にかけての雪景色の中で特別な結婚の思い出を残そうとする人もいる。

婚姻登記所の責任者、孫丹妮氏は「当初は小規模な登記窓口が一つあるだけで、1日に対応できるのは最大30組だった。需要に十分応えられなかった」と説明する。2025年12月に「美人松愛情森林婚姻登記所」が開設されてから人気は高まり続け、今年2月には美人松廊橋公園まで施設を拡張した。これにより、1日の登記可能件数は30組から180組に増えた。さらに、ヘアメークや結婚記念写真の撮影、無形文化遺産の体験、特色ある飲み物の提供など、関連サービスも充実させた。

浙江省(Zhejiang)紹興市(Shaoxing)越城区にある黄酒小鎮では、地元の伝統文化を取り入れた婚姻登記が人気を集めている。黄酒は、もち米などを原料に造られる中国の伝統的な醸造酒だ。町には酒の香りが漂い、結婚を祝う華やかな雰囲気が広がっている。

婚礼文化を体験できる施設「囍越里」では、紹興市出身の朱舒曼(Zhu Shuman)さんとパートナーが婚姻登記を終えた後、大きな酒がめの前に立ち、封印用の紙に二人の名前を書き込んだ。そして力を合わせて黄酒の入ったかめを封じ、記念写真を撮影。居合わせた観光客や職員に見守られながら、伝統文化を取り入れた特別な婚姻登記を終えた。

紹興では古くから結婚などの祝い事に黄酒が欠かせない。2500年以上の醸造の歴史を持つ紹興黄酒は、地域の暮らしや婚礼の習慣に深く根付き、地元を代表する文化の一つとなっている。

2015年に開業した黄酒小鎮は、黄酒文化の展示や水郷の古い町並みの散策、飲食や買い物などを楽しめる観光エリアとして整備されてきた。今年5月16日には、越城区婚姻登記センターが市街地から黄酒小鎮へ全面移転し、歴史ある町並みの中で婚姻手続きを行えるようになった。同センターは、浙江省民政庁が実施した2025年度の婚姻登記機関の標準化整備に関する審査で、最高ランクの「5A級婚姻登記機関」に認定されている。

中国各地で広がるこうした取り組みは、婚姻登記を単なる行政手続きから、旅行や地域文化の体験と結び付いた特別なイベントへと変えつつある。美しい自然や歴史ある町並みを舞台に人生の節目を迎える新たな旅行スタイルが、地域の観光にも新たな需要を生み出している。(c)東方新報/AFPBB News