【10月13日 東方新報】中国最大級の映画・ドラマ撮影基地として知られる浙江省(Zhejiang)の横店影視城にある清明上河図景区に、楽しそうな笑い声が響いていた。声の主は、ショートドラマの撮影を体験していた十数人の観光客。その多くが60歳以上だった。

16人からなる一行が撮影していたのは、「格格(皇族の娘)が宮廷で大騒ぎ」と題した宮廷ショートドラマ。男女1人ずつが皇帝と皇后、女性3人が妃、女性6人が格格、男性5人が格格との結婚を控えた「額駙(皇族の娘の夫)」を演じた。

撮影スタッフは現場の様子を見ながら台本のせりふを修正し、観光客にせりふや動きを指導する一方、出演する順番や演技の雰囲気も調整した。観光客がせりふの途中で思わず方言を口にすると、そのたびに現場は大笑いに包まれた。皇帝が結婚を許す場面では、演じていた男性がアドリブで「それならOKだ」と付け加え、現場はさらに盛り上がった。

格格役の列の先頭に立った湯(Tang)さんは、ピンク色の清朝風衣装をまとい、色とりどりの花で飾られた伝統的な髪飾りを着けていた。カメラを前にしても緊張する様子はなく、満面の笑みを浮かべていた。

湯さんは今年60歳で、貴州省(Guizhou)貴陽市(Guiyang)からツアー旅行で訪れた。貴陽から東へ向かい、目的地は浙江省海寧市(Haining)。途中で立ち寄った横店影視城でショートドラマの撮影を体験できると知り、すぐに申し込んだという。

「とても楽しかったです。ドラマの撮影ってこんなに面白いんですね。60年間生きてきて、撮影を体験するのは初めてです」と湯さん。以前は林業関係の仕事をしており、普段から宮廷を舞台にしたドラマを見るのが好きだったが、まさか自分がその登場人物を演じる日が来るとは思ってもいなかったという。

皇帝役を演じた66歳の常(Chang)さんも、「撮影を体験するのは初めてで、皇帝役を演じました。とても楽しかったです」と話した。旅行会社がショートドラマの撮影体験を用意していることは事前に知らなかったといい、「思いがけない体験で驚きました。これまで一度も撮影に関わったことがなかったので、うれしかったです」と語った。

皇后役を演じた65歳の王(Wang)さんは、「一番難しかったのは、昔の宮廷での礼儀作法が分からないこと。それに年齢もあって、せりふを覚えるのが大変でした。でも、監督が丁寧に教えてくれました」と話す。

王さんによると、ツアーには30人近くが参加していたが、ショートドラマの撮影に申し込んだのは16人だった。「追加料金もかからず、人生で初めての体験だったので、とても楽しかったです」と振り返った。

横店影視城の担当者によると、「ショートドラマ撮影体験」は今年8月に正式にスタートした。所要時間は1回約1時間で、料金は1人218元(約5123円)から。衣装やメークを含むプランは388元(約9118円)となっている。

監督やカメラマン、ヘアメーク担当、共演するNPC役などからなる専門スタッフが撮影をサポートし、実際の撮影現場に近い工程を体験できる。数十種類の脚本と1000着以上の撮影用衣装から選ぶことができ、完成した映像は1~2日で受け取れる。

担当者は「ピーク時には1日100人以上が体験しています。親子連れや若者、シニア層まで幅広く、爽快感のあるストーリーや宮廷ものが特に人気です」と説明した。9月上旬までに、撮影体験の参加者は2000人を突破したという。(c)東方新報/AFPBB News